グリフィスの理論とは

ぐりふぃすのりろん

き裂が伸びて解放される弾性エネルギーが新しい表面のエネルギーを上回ると破壊が進むとする理論。破壊応力は √(2Eγs/(πa)) で表される。

「グリフィスの理論」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(破壊力学と疲労など)。

この用語の分野: 破壊力学と疲労

エネルギーの収支で破壊を考える

グリフィスは1920年に、き裂が伸びるかどうかを、き裂の先端の応力ではなく、エネルギーの収支で判断する考え方を示しました。応力のかかった板の中でき裂が少し伸びると、周りに蓄えられていた弾性ひずみエネルギーが解放されます。一方で、新しい破面をつくるには表面エネルギーが必要です。き裂が短いうちは表面をつくるエネルギーのほうが大きくて伸びませんが、解放されるエネルギーはき裂が長いほど速く増えるので、ある長さを超えると解放されるエネルギーが上回り、き裂は加速しながら一気に進みます。

式の導き方と数値の例

広い板の中の長さ2aのき裂に垂直に応力σがかかるとき、平面応力では板厚あたり πσ²a²/E の弾性エネルギーが解放され、表面エネルギーは 4aγs です。全体のエネルギーを a で微分して0とおくと、破壊応力 σf = √(2Eγs/(πa)) が得られます。平面ひずみでは E を E/(1 − ν²) に置き換えます。例えば E = 70 GPa、γs = 1.0 J/m² のガラスで a = 10 µm なら σf は約67 MPa で、理論強度の約7 GPa の100分の1ほどです。強度は √a に反比例します。

金属への拡張

グリフィスの式は、塑性変形がほとんど起こらないガラスではよく成り立ちますが、金属に当てはめると強度をずっと低く見積もりすぎてしまいます。オロワンとアーウィンは、き裂の先端の塑性域で消費される仕事を表面エネルギーに加えればよいと考えました。延性のある鋼では、この塑性仕事が表面エネルギーの数千倍以上になり、破壊に必要なエネルギーの大部分を占めます。アーウィンはさらに、エネルギーの収支をエネルギー解放率 G で、き裂の先端の応力場を応力拡大係数 K で表し、両者の関係を示して、線形破壊力学の土台をつくりました。

脆い材料の強度がばらつく理由

グリフィスの理論からは、脆い材料の強度が、材料そのものよりも、中にある最も大きなき裂で決まることがわかります。同じガラスでも傷のつき方によって強度が大きく違い、同じ製法の試験片でも強度がばらつくのはこのためです。大きな部材ほど大きなき裂を含む確率が高いので、平均の強度は下がります。このばらつきと寸法の効果を統計的に扱うのがワイブル分布です。グリフィス自身も、細いガラス繊維ほど強いことを実験で示しました。セラミックスの設計で、き裂の大きさの管理や保証試験が重視されるのはこのためです。

グリフィスの理論の練習問題に挑戦

ガラス(ヤング率 E = 70 GPa、表面エネルギー γs = 1.0 J/m²)に、長さ a = 1.0 µm の表面き裂がある。グリフィスの式 σf = √(2Eγs/(πa)) で見積もった破壊応力はどれに最も近いか。

  1. A約149 MPa
  2. B約374 MPa
  3. C約211 MPa
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正解:C. 約211 MPa

2Eγs/(πa) = 2×70×10⁹×1.0/(3.14×1.0×10⁻⁶) ≈ 4.46×10¹⁶ Pa² で、その平方根は約2.11×10⁸ Pa、つまり約211 MPa です。グリフィスの式は、き裂が伸びるときに解放される弾性ひずみエネルギーが、新しくできる2つの表面のエネルギー 2γs を上回るとき、き裂が不安定に進むという条件から導かれます。約149 MPa は表面が2つできることによる係数2を落とした値、約374 MPa は π で割り忘れた値です。σf は √a に反比例するので、き裂の長さが4倍になると破壊応力は半分になります。

よくある質問

グリフィスの式で、強度がき裂の長さの平方根に反比例するのはなぜですか。

解放される弾性エネルギーはき裂の長さの2乗に比例して増え、表面エネルギーは長さに比例して増えます。両者の増え方が釣り合う条件を解くと、応力の2乗がき裂の長さに反比例する形になるので、強度は √a に反比例します。

グリフィスの式と破壊靭性 K_IC はどう関係しますか。

グリフィスの式は σf√(πa) = √(2Eγs) と書き直せます。左辺は応力拡大係数 K の形で、右辺はその材料の定数なので、破壊の条件は K が臨界値に達することと同じです。ガラスのような脆い材料では、K_IC ≈ √(2Eγs) とみなせます。

グリフィスの理論はどんな材料に使えますか。

ガラスやセラミックスのように、破壊の前に塑性変形がほとんど起こらない材料に、そのまま使えます。金属や高分子では、き裂の先端の塑性変形などで消費されるエネルギーを含めて考える必要があり、その形に広げたものが、現在の破壊力学の基本になっています。

解説の中の「グリフィスの理論」

「グリフィスの理論」が出てくる問題(1問)

  1. ガラス(ヤング率 E = 70 GPa、表面エネルギー γs = 1.0 J/m²)に、長さ a = 1.0 µm の表面き裂がある。グリフィスの式 σf = √(2Eγs/(πa)) で見積もった破壊応力はどれに最も近いか。

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