複合則 計算ツール
繊維と母材(マトリックス)のヤング率と、繊維の体積分率から、複合材料のヤング率を複合則で見積もります。繊維方向は等ひずみ(並列のばね)、繊維に垂直な方向は等応力(直列のばね)の式を使います。既定値は、炭素繊維(230 GPa、1.80 g/cm³)を体積分率60 %でエポキシ樹脂(3.5 GPa、1.20 g/cm³)に入れた一方向材で、繊維方向は約139 GPa、垂直方向は約8.6 GPaです。
結果
- 繊維の体積分率 Vf
- –
- 繊維の質量分率 Wf
- –
- 複合材料の密度 ρ
- –
ヤング率(複合則)
- 繊維方向 E₁(等ひずみ、Voigt、上限)
- –
- 垂直方向 E₂(等応力、Reuss、下限)
- –
- 異方性 E₁/E₂
- –
- 繊維方向の荷重のうち繊維の受け持ち
- –
比剛性
- 繊維方向 E₁/ρ
- –
- 垂直方向 E₂/ρ
- –
- 軽くて剛い梁の指数 √E₁/ρ (GPa^½/(g/cm³))
- –
等ひずみの式と等応力の式は、ヤング率の上限と下限の目安です。実際の垂直方向のヤング率は等応力の式より少し大きいことが多く、ハルピン・ツァイの式などで補正します。短繊維や粒子分散の材料、ボイドを含む材料では、この値から外れます。
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ほかの入力は今の値のまま、選んだ入力だけを今の値の1/4〜4倍の範囲で変えたときの結果です。赤い点が今の値です。
等ひずみの式(並列、Voigt)
繊維に平行に引っ張ると、繊維と母材は並列につないだばねのように同じだけ伸びます。ひずみが等しいので、全体の応力は体積分率で重みをつけた平均になり、E₁ = VfEf + VmEm が得られます。既定値では 0.60 × 230 + 0.40 × 3.5 ≈ 139 GPa です。このとき、荷重のうち繊維が受け持つ割合は VfEf/E₁ で、既定値では約99 %になります。繊維の体積が半分ほどでも、繊維方向の剛性と強度はほぼ繊維で決まります。
等応力の式(直列、Reuss)
繊維に垂直に引っ張ると、繊維と母材は直列につないだばねのように同じ応力を受け、ひずみが体積分率で足し合わされます。そのため 1/E₂ = Vf/Ef + Vm/Em となり、柔らかい母材の影響が強く出ます。既定値では 1/(0.60/230 + 0.40/3.5) ≈ 8.6 GPa で、繊維方向の約16分の1です。同じ体積分率で比べると、等ひずみの式は上限、等応力の式は下限を与えます(フォークトとロイスの限界)。
体積分率と質量分率
複合則に使うのは体積分率です。製造では繊維の質量分率で管理することが多いので、密度で換算します。Vf = (Wf/ρf)/(Wf/ρf + (1 − Wf)/ρm) で、炭素繊維(1.80 g/cm³)とエポキシ(1.20 g/cm³)なら、質量分率70 %は体積分率約61 %です。繊維の密度が母材より大きいと、体積分率は質量分率より小さくなります。複合材料の密度は、ボイドがなければ ρ = Vfρf + Vmρm です。
比剛性と材料選択
同じ重さでどれだけ剛いかは、比剛性 E/ρ で比べます。鋼(210 GPa、7.9 g/cm³)は約27 GPa/(g/cm³)で、アルミニウム合金やチタン合金もほぼ同じです。既定値のCFRPは繊維方向で約89 GPa/(g/cm³)と3倍以上ですが、垂直方向では約5.5で鋼より小さくなります。曲げ剛性を決めて最も軽い梁を選ぶときの指数は √E/ρ で、鋼の約1.8に対し、既定値の繊維方向は約7.6です。実際の部品では、繊維の向きを変えた層を積み重ねて方向による差を補うため、比剛性の利点はこれより小さくなります。
複合材料の問題を解く
- A繊維に平行に引っ張るときは等ひずみの式、垂直に引っ張るときは等応力の式で近似する
- B繊維に平行に引っ張るときは等応力の式、垂直に引っ張るときは等ひずみの式で近似する
- Cどちらの方向でも等ひずみの式が成り立ち、ヤング率は繊維の向きによらない
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正解:A. 繊維に平行に引っ張るときは等ひずみの式、垂直に引っ張るときは等応力の式で近似する
繊維に平行に引っ張ると、繊維と母材は並列につながったばねのように同じだけ伸びるので、等ひずみの式 E₁ = VfEf + VmEm が成り立ちます。繊維に垂直に引っ張ると、繊維と母材は直列のばねのように同じ応力を受けるので、等応力の式 1/E₂ = Vf/Ef + Vm/Em で近似します。同じ体積分率で比べると、等ひずみの式はヤング率の上限、等応力の式は下限を与えます(フォークトとロイスの限界)。平行に等応力、垂直に等ひずみの式を当てる選択肢は、平行と垂直を逆にした誤りです。一方向材のヤング率は繊維方向と垂直方向で大きく違い、方向によらないという説明も誤りです。実際の垂直方向のヤング率は、等応力の式より少し大きくなることが多く、ハルピン・ツァイの式などで補正します。
- A約5.8 GPa
- B約37.5 GPa
- C約0.17 GPa
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正解:A. 約5.8 GPa
繊維に垂直な方向では、繊維と樹脂が直列に並んで同じ応力を受けると考え、1/E₂ = Vf/Ef + Vm/Em を使います。1/E₂ = 0.50/72 + 0.50/3.0 = 0.00694 + 0.1667 = 0.1736 GPa⁻¹ なので、E₂ = 1/0.1736 ≈ 5.76 GPa、約5.8 GPa です。約37.5 GPa は等ひずみの式 0.50 × 72 + 0.50 × 3.0 で求めた繊維方向のヤング率です。約0.17 GPa は逆数を取り忘れた値です。垂直方向のヤング率は、柔らかい樹脂のヤング率に近い値にとどまり、繊維方向の約15%(約6.5分の1)しかありません。一方向材を垂直方向に力がかかる部品に使わないのはこのためです。
- A約0.67
- B約3.3
- C約4.9
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正解:B. 約3.3
比弾性率は、CFRP が 140/1.6 = 87.5、鋼が 210/7.9 ≈ 26.6(単位はどちらも GPa/(g/cm³))なので、比は 87.5/26.6 ≈ 3.3 です。ヤング率そのものは CFRP のほうが小さいものの、密度が約5分の1なので、同じ重さで比べると約3.3倍の剛性になります。約0.67 はヤング率だけを比べた値(140/210)、約4.9 は密度の比(7.9/1.6)だけを見た値です。ただし、この値は繊維方向だけのもので、繊維に垂直な方向では比弾性率は鋼よりはるかに小さくなります。実際の構造では積層によって方向を補うので、比剛性の利点はこの値より小さくなります。
よくある質問
どちらの式を使えばよいですか?
連続繊維の一方向材を繊維に平行に引っ張るときは等ひずみの式、垂直に引っ張るときは等応力の式で近似します。粒子を分散させた材料や短繊維の材料のヤング率は、ふつう2つの式のあいだに入ります。
強度にも複合則は使えますか?
繊維方向の強度は、繊維が破断するときのひずみでの母材の応力を使って σc ≈ Vfσf + Vmσm′ と見積もることがあります。ただし、強度は欠陥や界面の接着、繊維の長さ(臨界繊維長)の影響を強く受け、ヤング率ほどよくは合いません。
なぜ Voigt の式が上限になるのですか?
同じ平均ひずみを与えたとき、材料の中のひずみの分布は、弾性ひずみエネルギーが最も小さくなるように決まります(最小ポテンシャルエネルギーの原理)。一様なひずみ(等ひずみ)はありうる分布の1つにすぎないので、それで計算したエネルギー、つまり等ひずみの式のヤング率は、真の値以上になります。実際には柔らかい母材のほうが大きくひずむことで、エネルギーが下がります。同じように、一様な応力を仮定すると補エネルギーが真の値以上になるので、等応力の式は下限になります。この2つの式がヤング率の厳密な限界になるのは、両相のポアソン比が等しいときで、違うと一方向材の繊維方向のヤング率は等ひずみの値をわずかに上回ることがあります。一方向材の繊維方向では実際のひずみがほぼ一様なので、等ひずみの式はよく合います。