強化機構と転位

焼なました低炭素鋼を引っ張ると、上降伏点のあとで応力が下がり、リューダース帯が試験片を伝わる降伏点現象が現れる。この現象と対策についての説明として正しいものはどれか。

  1. A粒界に析出したセメンタイトが転位の発生を妨げて起こるので、焼入れでセメンタイトを溶かしておくと、室温で何か月置いても現れなくなる
  2. B炭素や窒素の原子が転位に集まって固着するために起こり、軽く冷間圧延して動ける転位を増やすと消えるが、室温で放置すると再び現れることがある
  3. C転位が粒界に積み重なって上降伏点ができるので、結晶粒を大きくして粒界を減らすと、降伏点現象もリューダース帯も起こらなくなる
答えと解説を見る

正解:B. 炭素や窒素の原子が転位に集まって固着するために起こり、軽く冷間圧延して動ける転位を増やすと消えるが、室温で放置すると再び現れることがある

低炭素鋼では、侵入型の炭素や窒素の原子が転位のまわりに集まり(コットレル雰囲気)、転位を固着します。降伏には、転位を引きはがすか新しい転位を生む大きな応力が要り(上降伏点)、いったん動き出すと低い応力で変形が進むので、変形した帯が試験片を伝わります。プレス品の表面に模様(ストレッチャーストレイン)が出る原因になるため、薄鋼板は1%前後の調質圧延で動ける転位を増やしてから使います。ただし、固溶した炭素や窒素が拡散して再び転位を固着すると降伏点が戻り(ひずみ時効)、炭素や窒素をTiやNbで化合物にしたIF鋼ではこれが起こりません。セメンタイトや粒界への積み重なりで説明する選択肢は誤りです。

誤りを報告

この分野を解く 分野ページへ

強化機構と転位のほかの問題

  1. 加工硬化した金属の流動応力を、テイラーの式 σ = MαGb√ρ で見積もる(ρは転位密度)。冷間加工した銅で、M = 3.06、α = 0.3、G = 48 GPa、b = 0.256 nm、ρ = 1.0×10¹⁴ m⁻² のとき、σはどれに最も近いか。
  2. 金属を引張りで塑性変形させたあと、荷重を除いて逆向きの圧縮をかけると、圧縮での降伏応力が、引張りを続けたときの流動応力より小さくなる。この現象(バウシンガー効果)の説明として正しいものはどれか。
  3. 時効で析出物が大きくなるにつれて、強さが上がって最大になり、その後下がる(過時効)。析出物と転位の相互作用からみた説明として正しいものはどれか。析出物の体積分率は一定とする。
  4. アルミニウム合金で、転位が析出物の間を張り出して通り抜けるオロワン機構によるせん断応力の増分を Δτ ≈ Gb/L で見積もる(Lは析出物の間隔)。G = 26 GPa、b = 0.286 nm、L = 100 nm とし、多結晶の降伏応力の増分を Δσ = MΔτ(テイラー因子 M = 3.06)とすると、Δσはどれに最も近いか。
  5. Ni基超合金のγ'相(L1₂型の規則相)のように、規則構造をもつ析出物を転位が切って通るときの特徴として正しいものはどれか。