強化機構と転位
理論強さと転位、シュミット因子とテイラー因子、パイエルス応力、固溶強化と降伏点現象、テイラーの式、析出物の切断とオロワン機構、分散強化、強化の重ね合わせ、強度と延性の両立を3択問題で学べます。
—あなたの正答率
0 / 15解いた問題
強化機構と転位の要点
金属の強さは、転位がどれだけ動きにくいかで決まります。単結晶では、すべり系に働く分解せん断応力が臨界分解せん断応力に達するとすべりが始まり、引張応力との比はシュミット因子で表されます。多結晶では結晶粒どうしが整合して変形する必要があるため、降伏応力は臨界分解せん断応力のテイラー因子倍(FCCで約3倍)になります。BCC金属では格子の抵抗が大きく、降伏応力が温度に強く依存します。
強化の方法は、溶質原子、ほかの転位、析出物や分散粒子、結晶粒界という障害物の種類で分けられます。転位密度による強化はテイラーの式で、硬い粒子による強化はオロワン機構で見積もり、小さな析出物は転位に切られます。複数の強化は単純な和や2乗和で重ね合わせます。多くの強化は延性や靭性を下げますが、結晶粒の微細化や変形中の変態・双晶は、強さと延性・靭性を両立させる道を開きます。
強化機構と転位の問題一覧(15問)
- 完全な結晶で、すべり面の上下の原子面を一度にずらすのに必要なせん断応力(理論せん断強さ)を τ ≈ G/2π で見積もると、銅(剛性率 G = 48 GPa)では約7.6 GPaになる。実際の銅の単結晶がすべり始めるせん断応力が1 MPa程度と桁違いに小さい理由として正しいものはどれか。
- 単結晶の丸棒を引っ張る。引張軸とすべり面の法線のなす角が60°、引張軸とすべり方向のなす角が40°のすべり系の臨界分解せん断応力が0.80 MPaのとき、このすべり系がすべり始める引張応力はどれに最も近いか。ほかのすべり系は考えない。
- FCC金属の多結晶の降伏応力σyは、単結晶の臨界分解せん断応力τcの約3倍(σy ≈ Mτc、M ≈ 3.06)になる。この係数M(テイラー因子)が、シュミット因子の最大値0.5の逆数である2より大きくなる理由として正しいものはどれか。
- 鉄などのBCC金属の降伏応力は、温度を下げると大きく上がるが、銅やアルミニウムなどのFCC金属では温度による変化が小さい。この違いのおもな原因として正しいものはどれか。
- ある置換型の固溶体で、降伏応力の増分 Δσ が溶質の濃度cの1/2乗に比例する(フライシャーのモデル)とする。溶質1 at%で Δσ = 30 MPa のとき、溶質4 at%での Δσ はどれに最も近いか。溶質どうしの相互作用や析出は考えない。
- 焼なました低炭素鋼を引っ張ると、上降伏点のあとで応力が下がり、リューダース帯が試験片を伝わる降伏点現象が現れる。この現象と対策についての説明として正しいものはどれか。
- 加工硬化した金属の流動応力を、テイラーの式 σ = MαGb√ρ で見積もる(ρは転位密度)。冷間加工した銅で、M = 3.06、α = 0.3、G = 48 GPa、b = 0.256 nm、ρ = 1.0×10¹⁴ m⁻² のとき、σはどれに最も近いか。
- 金属を引張りで塑性変形させたあと、荷重を除いて逆向きの圧縮をかけると、圧縮での降伏応力が、引張りを続けたときの流動応力より小さくなる。この現象(バウシンガー効果)の説明として正しいものはどれか。
- 時効で析出物が大きくなるにつれて、強さが上がって最大になり、その後下がる(過時効)。析出物と転位の相互作用からみた説明として正しいものはどれか。析出物の体積分率は一定とする。
- アルミニウム合金で、転位が析出物の間を張り出して通り抜けるオロワン機構によるせん断応力の増分を Δτ ≈ Gb/L で見積もる(Lは析出物の間隔)。G = 26 GPa、b = 0.286 nm、L = 100 nm とし、多結晶の降伏応力の増分を Δσ = MΔτ(テイラー因子 M = 3.06)とすると、Δσはどれに最も近いか。
- Ni基超合金のγ'相(L1₂型の規則相)のように、規則構造をもつ析出物を転位が切って通るときの特徴として正しいものはどれか。
- Cuに微細なAl₂O₃粒子を分散させた合金や、鉄にY₂O₃の粒子を分散させたODS鋼のように、酸化物の粒子で強化する分散強化の特徴として正しいものはどれか。
- ある合金の降伏応力を、摩擦応力50 MPa、固溶強化60 MPa、析出強化200 MPa、転位強化100 MPaの寄与から見積もる。摩擦応力と固溶強化は単純に足し、強さの近い障害物である析出物と転位の寄与は2乗和の平方根で合わせる(σ = σ₀ + σss + √(σp² + σd²))とすると、降伏応力はどれに最も近いか。
- 鋼の強化法のうち、降伏強さを上げると同時に、延性脆性遷移温度を下げて低温の靭性も高められるものはどれか。
- 金属を強くすると、ふつうは一様伸びが小さくなる。高強度でも大きな一様伸びを示すTRIP鋼やTWIP鋼の考え方として正しいものはどれか。くびれは dσ/dε = σ で始まるとする(σ、εは真応力と真ひずみ)。