強化機構と転位

金属を引張りで塑性変形させたあと、荷重を除いて逆向きの圧縮をかけると、圧縮での降伏応力が、引張りを続けたときの流動応力より小さくなる。この現象(バウシンガー効果)の説明として正しいものはどれか。

  1. A引張りの間に障害物の前に積み重なった転位などが逆向きの内部応力(背応力)を残し、逆向きの変形を助けるから
  2. B引張りの間にできた空孔が除荷のあとで集まって空洞になり、圧縮では空洞がつぶれて見かけの降伏応力が下がるから
  3. C引張りの塑性変形で結晶粒が引張りの方向に伸びて細かくなり、ホール・ペッチの関係で圧縮の降伏応力だけが下がるから
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正解:A. 引張りの間に障害物の前に積み重なった転位などが逆向きの内部応力(背応力)を残し、逆向きの変形を助けるから

引張りの間、転位は粒界や析出物、ほかの転位の集まりの前に積み重なり、硬い粒子のまわりにはオロワンループが残ります。これらは、引張りの変形に逆らい、逆向きの変形を助ける向きの内部応力(背応力)をつくります。そのため、荷重の向きを反転すると背応力が転位を押し戻す側に働き、圧縮は小さい応力で始まります。空孔の集まりやつぶれでは説明できません。また、細粒化はホール・ペッチの関係で引張りと圧縮のどちらの降伏応力も上げる向きに働くので、圧縮だけが下がる理由にはなりません。バウシンガー効果は、繰り返し荷重を受ける部材の解析や、板の曲げ戻し、成形した鋼管の強度の評価で考慮する必要があります。

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