強化機構と転位

ある合金の降伏応力を、摩擦応力50 MPa、固溶強化60 MPa、析出強化200 MPa、転位強化100 MPaの寄与から見積もる。摩擦応力と固溶強化は単純に足し、強さの近い障害物である析出物と転位の寄与は2乗和の平方根で合わせる(σ = σ₀ + σss + √(σp² + σd²))とすると、降伏応力はどれに最も近いか。

  1. A約334 MPa
  2. B約410 MPa
  3. C約237 MPa
答えと解説を見る

正解:A. 約334 MPa

析出物と転位の寄与は √(200² + 100²) = √50000 ≈ 224 MPa で、これに50 + 60 = 110 MPa を足すと、約334 MPa になります。約410 MPa はすべてを単純に足した値、約237 MPa はすべてを2乗和の平方根で合わせた値です。同じすべり面の上に強さの近い点状の障害物が混ざっているとき、転位はそれらを区別せずに引っかかるので、強さは2乗和の平方根に近くなります。一方、強さの大きく違う障害物どうしや、格子の摩擦のように性質の違う抵抗は、単純な足し合わせに近くなります。中間の指数を使うこともあり、合わせ方で見積もりが数十%変わるので、どの式を使ったかを明らかにして比べる必要があります。

誤りを報告

この分野を解く 分野ページへ

強化機構と転位のほかの問題

  1. 鋼の強化法のうち、降伏強さを上げると同時に、延性脆性遷移温度を下げて低温の靭性も高められるものはどれか。
  2. 金属を強くすると、ふつうは一様伸びが小さくなる。高強度でも大きな一様伸びを示すTRIP鋼やTWIP鋼の考え方として正しいものはどれか。くびれは dσ/dε = σ で始まるとする(σ、εは真応力と真ひずみ)。
  3. 完全な結晶で、すべり面の上下の原子面を一度にずらすのに必要なせん断応力(理論せん断強さ)を τ ≈ G/2π で見積もると、銅(剛性率 G = 48 GPa)では約7.6 GPaになる。実際の銅の単結晶がすべり始めるせん断応力が1 MPa程度と桁違いに小さい理由として正しいものはどれか。
  4. 単結晶の丸棒を引っ張る。引張軸とすべり面の法線のなす角が60°、引張軸とすべり方向のなす角が40°のすべり系の臨界分解せん断応力が0.80 MPaのとき、このすべり系がすべり始める引張応力はどれに最も近いか。ほかのすべり系は考えない。
  5. FCC金属の多結晶の降伏応力σyは、単結晶の臨界分解せん断応力τcの約3倍(σy ≈ Mτc、M ≈ 3.06)になる。この係数M(テイラー因子)が、シュミット因子の最大値0.5の逆数である2より大きくなる理由として正しいものはどれか。