強化機構と転位

FCC金属の多結晶の降伏応力σyは、単結晶の臨界分解せん断応力τcの約3倍(σy ≈ Mτc、M ≈ 3.06)になる。この係数M(テイラー因子)が、シュミット因子の最大値0.5の逆数である2より大きくなる理由として正しいものはどれか。

  1. A多結晶では最もすべりやすい向きの結晶粒だけが先にすべり、ほかの粒は弾性のまま残るので、平均の強さが下がる分を補ってMが大きくなる
  2. B隣り合う結晶粒が粒界ですき間や重なりをつくらずに変形するには、各粒で5つ以上の独立なすべり系が働く必要があり、向きの悪い系も使うから
  3. C多結晶では粒界の面積が単結晶よりはるかに大きく、粒界エネルギーの分だけ変形の仕事が増えるので、結晶粒の大きさによらずMが約3倍になるから
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正解:B. 隣り合う結晶粒が粒界ですき間や重なりをつくらずに変形するには、各粒で5つ以上の独立なすべり系が働く必要があり、向きの悪い系も使うから

多結晶では、各結晶粒が勝手な形に変形すると粒界ですき間や重なりができてしまいます。任意の形の変化に追従するには、体積一定のもとで5つの独立なすべり系が必要です(フォン・ミーゼスの条件)。そのため、シュミット因子の大きい系だけでなく向きの悪い系も同時に働かせることになり、ランダムな向きのFCC多結晶で平均するとテイラー因子は約3.06になります。最もすべりやすい粒だけで降伏が決まるなら、係数が2より大きくなることを説明できません。テイラー因子は粒の向きの分布で決まり、粒界の面積や粒径にはよりません。粒径の効果はホール・ペッチの関係として別に加えます。独立なすべり系が足りないHCPの金属の多結晶で延性が乏しいのも、この条件から理解できます。

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