鉄–炭素状態図ビューア

炭素0〜6.70 wt%、温度400〜1600 ℃のFe–Fe₃C系(準安定系)の状態図です。図をクリック/タップするか、炭素量と温度を数値で入れると、その点の相を示し、二相領域ならタイラインを引いて、両端の相の組成とてこの規則による質量分率を計算します。あわせて、その炭素量の鋼・鋳鉄を高温からゆっくり冷やしたときの室温の組織の目安も示します。既定値は0.40 wt% Cの亜共析鋼を750 ℃に保った点(α + γ の二相領域)です。

入力

状態図と結果

その点の相
–
炭素量での分類
–

その点の相の組成と質量分率

ゆっくり冷やしたときの室温の組織(目安)

主な点(共析点 727 ℃・0.76 wt% C、共晶点 1147 ℃・4.30 wt% C、包晶 1495 ℃など)は教科書の定番の値に合わせ、線はその点を通る直線や滑らかな曲線で近似しています。実際の線とは数℃〜数十℃ずれることがあり、合金元素を含む実用鋼では線の位置そのものが変わります。

Fe–Fe₃C系状態図の読み方

縦軸が温度、横軸が炭素量(wt%)で、右端の6.70 wt% Cは鉄と炭素の化合物セメンタイト(Fe₃C)そのものに当たります。図のある点が単相領域にあれば、その相だけが平衡状態で安定です。二相領域にあれば、その温度で水平線(タイライン)を引き、線が領域の境界と交わる両端が、共存する2相の炭素量になります。各相の量はてこの規則 Wα = (Cβ − C₀)/(Cβ − Cα) で求まります。3相が共存できるのは、1495 ℃・1147 ℃・727 ℃の3本の水平線の上だけです。

3つの不変反応と純鉄の変態点

1495 ℃では包晶反応 δ(0.09 wt% C) + L(0.53 wt% C) → γ(0.17 wt% C)、1147 ℃では共晶反応 L(4.30 wt% C) → γ(2.14 wt% C) + Fe₃C が起こり、共晶の組織をレーデブライトとよびます。727 ℃では共析反応 γ(0.76 wt% C) → α(0.022 wt% C) + Fe₃C が起こり、層状のパーライトができます。炭素を含まない純鉄は、912 ℃でα(BCC)とγ(FCC)、1394 ℃でγとδ(BCC)が入れ替わり、1538 ℃で融けます。γの炭素の最大固溶限2.14 wt%が、鋼と鋳鉄を分ける目安です。

A1・A3・Acm線の意味

A1は共析温度727 ℃の水平線で、これより下ではオーステナイトは平衡では存在しません。A3は亜共析鋼でオーステナイトからフェライトが出始める温度で、純鉄の912 ℃から共析点の727 ℃まで、炭素が増えるほど下がります。Acmは過共析鋼でオーステナイトからセメンタイトが出始める温度で、オーステナイトの炭素の固溶限を表し、727 ℃・0.76 wt%から1147 ℃・2.14 wt%まで上がります。焼なましや焼入れの加熱温度はこれらの線を基準に決めます。実際の加熱・冷却では変態が平衡の温度からずれるので、加熱時の値をAc、冷却時の値をArと書き分けます。

亜共析・共析・過共析鋼の組織

オーステナイトからゆっくり冷やすと、0.76 wt% Cより少ない亜共析鋼では、A3線を横切ってから727 ℃までのあいだに初析フェライトができ、残りのオーステナイトが727 ℃でパーライトになります。0.40 wt% Cなら、てこの規則で初析フェライト (0.76 − 0.40)/(0.76 − 0.022) ≈ 48.8 %、パーライト約51.2 %です。0.76 wt% Cの共析鋼はパーライトだけになります。過共析鋼ではAcm線から粒界に初析セメンタイトが出て、1.2 wt% Cなら初析セメンタイト約7.4 %、パーライト約92.6 %です。パーライトの中は、質量でフェライトが約89 %、セメンタイトが約11 %です。

鋳鉄の範囲とレーデブライト

2.14 wt% Cを超えると、凝固の最後に1147 ℃で共晶反応が起こります。4.30 wt% Cの共晶鋳鉄は全体がレーデブライト(γとFe₃Cの混合組織)になり、727 ℃でその中のγがパーライトに変わるので、室温では変態レーデブライトとよばれる組織になります。4.30 wt%より少ない亜共晶鋳鉄では初晶γとレーデブライト、多い過共晶鋳鉄では初晶セメンタイトとレーデブライトになります。このように炭素がすべてセメンタイトとして固まった鋳鉄は、破面が白く硬くもろい白鋳鉄です。

準安定系と安定系(黒鉛)の違い

セメンタイトは厳密には準安定な相で、鉄と炭素の本当の平衡はFeと黒鉛のあいだにあります。Fe–黒鉛の安定系では、共晶点が約1153 ℃・約4.2 wt% C、共析点が約738〜740 ℃・約0.65〜0.69 wt% C(資料によって少し違います)と、準安定系より少し高温・低炭素側にずれます。Siが多い、冷却がゆっくりであるといった条件では黒鉛が出やすく、組織に黒鉛を含むねずみ鋳鉄(灰鋳鉄)などになります。逆に冷却が速い場合やCr・Moなどの炭化物をつくる元素が多い場合はセメンタイトができやすくなります。鋼では黒鉛はふつう出にくいので、Fe–Fe₃C系で考えます。

速く冷やすとこの図は使えない

状態図は、十分にゆっくり加熱・冷却して平衡に達したときの相を表し、変態にかかる時間の情報を含みません。焼入れのように速く冷やすと、変態が平衡の温度より低温側にずれ、拡散が追いつかないまま、マルテンサイトやベイナイトといった非平衡の組織ができます。これらは状態図には出てこないので、どの組織になるかを知るには、恒温保持での変態を表すTTT図や、連続冷却での変態を表すCCT図が必要です。この図とてこの規則で求めた組織と分率は、徐冷(焼なまし)した場合の目安と考えてください。

この図の近似について

主な点の値は教科書でよく使われる値にそろえ、線はその点のあいだを直線で結んでいます。A3線だけは、912 ℃から727 ℃まで T = 912 − 185·(C/0.76)^0.7 の滑らかな曲線にしています。この式は両端の点を通るように選んだもので、途中の温度(例えば0.40 wt% Cで約794 ℃)は図の形に合わせた近似です。実際のA3とは十数℃ずれることがあるので、正確な値が必要なときは資料の状態図で確かめてください。727 ℃より下のαの固溶限は、0.022 wt%からほぼ0へ下がる様子を描いた模式です。4.30 wt%より右の液相線は資料によって大きく違うため、破線の目安です。Fe₃Cの炭素量は、このサイトのほかの説明や問題にそろえて6.70 wt%としています。資料によって6.67〜6.70 wt%で(Fe₃Cの化学量論からは約6.69 wt%)、共晶温度を1148 ℃、包晶温度を1493 ℃とする資料もあります。これらの違いは、分率の計算では小数点以下の差にとどまります。

状態図の問題を解く

Fe-Fe₃C系状態図の共析点についての説明として正しいものはどれか。

  1. A約0.76 wt%C、727℃で γ → α + Fe₃C が起こり、パーライトができる
  2. B約4.3 wt%C、1147℃で L → γ + Fe₃C が起こり、層状のパーライトができる
  3. C約0.022 wt%C、912℃で γ → α が起こり、ベイナイトができる
答えと解説を見る

正解:A. 約0.76 wt%C、727℃で γ → α + Fe₃C が起こり、パーライトができる

Fe-Fe₃C系の共析点は約0.76 wt%C、727℃で、オーステナイト(γ)がフェライト(α)とセメンタイト(Fe₃C)の層状の組織であるパーライトに変わります。約4.3 wt%C、1147℃の反応は液相が関わる共晶反応で、できる組織はレーデブライトであり、パーライトではありません。0.022 wt%Cは727℃でのαの最大固溶限、912℃は純鉄の γ → α 変態の温度です。ベイナイトは平衡状態図には現れず、過冷却したオーステナイトから中間の温度域で生じる非平衡の組織です。共析組成より炭素の少ない鋼を亜共析鋼、多い鋼を過共析鋼とよびます。

0.40 wt%Cの亜共析鋼を727℃のすぐ下まで平衡冷却した。初析フェライトの質量分率はどれに最も近いか。共析組成を0.76 wt%C、727℃でのフェライトの炭素濃度を0.022 wt%C、セメンタイトを6.70 wt%Cとする。

  1. A約0.51
  2. B約0.94
  3. C約0.49
答えと解説を見る

正解:C. 約0.49

初析フェライトは、727℃のすぐ上の α + γ 領域ですでにできているフェライトで、残りのγがすべてパーライトになります。てこの規則より W_初析α = (0.76 − 0.40)/(0.76 − 0.022) = 0.36/0.738 ≈ 0.49 です。約0.51は残りのパーライトの分率で、反対側の距離をとった誤りです。約0.94は α + Fe₃C の2相としてのフェライト全体の分率 (6.70 − 0.40)/(6.70 − 0.022) で、パーライトの中のフェライトまで含んでいます。初析フェライトとパーライトの面積の比は、顕微鏡組織から亜共析鋼の炭素量を見積もる手がかりになります。

1.2 wt%Cの過共析鋼をオーステナイト域から徐冷したとき、室温で得られる組織はどれか。

  1. A初析フェライトとパーライト
  2. B初析セメンタイトとパーライト
  3. Cパーライトのみ
答えと解説を見る

正解:B. 初析セメンタイトとパーライト

共析組成の0.76 wt%Cより炭素の多い過共析鋼では、冷却中に Acm 線を横切ると、まずオーステナイトの粒界に初析セメンタイトが網目状に析出します。727℃に達すると、残りのオーステナイト(約0.76 wt%C)が共析反応でパーライトになるので、室温の組織は初析セメンタイトとパーライトになります。初析フェライトとパーライトは亜共析鋼の組織で、パーライトのみになるのは共析鋼です。粒界の網目状のセメンタイトはもろさの原因になるため、工具鋼などでは球状化焼なましでセメンタイトを粒状にします。

よくある質問

室温の組織の分率を727 ℃直下の値で計算してよいのはなぜですか?

727 ℃より下では、平衡でもα相の炭素の固溶限がわずかに下がるだけで、初析フェライトやパーライトの量はほとんど変わらないからです。教科書の計算も、ふつう727 ℃直下の組成を使います。

初析フェライトの分率と、フェライト相全体の分率はどう違いますか?

初析フェライトは組織(顕微鏡で見分けられる部分)の分率で、0.40 wt% Cでは約48.8 %です。フェライト相全体はパーライトの中のフェライトも含めた相の分率で、両端を0.022 wt%と6.70 wt% Cにして約94 %になります。何の分率を求めるかで、タイラインの端を変えます。

焼入れした鋼の組織もこの図でわかりますか?

わかりません。マルテンサイトは拡散を伴わない変態でできる非平衡の組織で、状態図には現れません。焼入れ後の組織は、TTT図やCCT図と冷却速度から考えます。ただし、焼入れの前にどの温度まで加熱すればオーステナイトにできるかは、この図のA3・Acm線から読み取れます。

鋼と鋳鉄の境目は何wt% Cですか?

Fe–Fe₃C系では、オーステナイトの炭素の最大固溶限2.14 wt%が目安です。これより少ないと固体の状態で全体をオーステナイトにでき、多いと凝固の最後に共晶反応が起こります。資料によって2.0〜2.11 wt%とすることもあります。

関連する用語

共析反応 パーライト 共晶反応 てこの規則 マルテンサイト

関連する比較

関連する計算ツール

材料科学の計算ツール →