XRD 解析ワークベンチ

粉末X線回折(XRD)の計算を1ページにまとめました。上のタブで、回折パターンのシミュレーション、測ったピークの指数づけと格子定数、ピーク幅からの結晶子サイズとひずみ、ひずみ・固溶によるピークの移動を切り替えます。どのモードも途中の式を順に示し、表は CSV でコピーでき、条件は URL で共有できます。既定値は BCC の鉄と Cu Kα 線です。

入力

結果

計算の前提: 粉末は細かく向きがそろっていない(配向なし)、試料は十分に厚い平板(ブラッグ–ブレンターノ配置で吸収の補正は角度によらない)、消衰は無視、温度因子は全原子に同じ B。原子散乱因子は International Tables Vol. C の Cromer–Mann 型の近似(sinθ/λ < 2 Å⁻¹)、異常分散は Henke らの表、波長は X-ray Data Booklet の値です。指数づけは立方晶だけです。

このワークベンチの使い方

4つのモードは、XRD の実験の流れに合わせています。「パターン」は、物質を選ぶ(または構造と格子定数を入れる)と、どの角度にどの強さのピークが出るかを計算します。測る前にピークの位置と重なりを確かめる、測ったパターンと見比べる、使う波長を決める、といった使い方です。「指数づけ」は逆向きで、測ったピークの 2θ から立方晶の構造を判定し、各ピークに (hkl) をつけ、格子定数を最小二乗や外挿で求めます。「結晶子サイズ」はピークの幅からシェラーの式と Williamson–Hall プロットで結晶子の大きさとひずみを見積もり、「ピークの移動」は格子のひずみや固溶でピークがどれだけ動くか、逆に動いた量からひずみや組成がいくらかを計算します。周期表のツールで元素を選んで「XRD で確かめる」を押すと、その元素の構造と格子定数がこのページに入ります。

ブラッグの法則と面間隔

間隔 d で並んだ原子面に波長 λ のX線が当たると、隣り合う面で反射した波の道のりの差 2d sinθ が波長の整数倍のときに強め合います(ブラッグの法則 nλ = 2d sinθ)。XRD では n = 2 の (110) を (220) として扱うので、ふつう n = 1 とし、指数のほうを整数倍にします。立方晶では 1/d² = (h² + k² + l²)/a²、六方晶では 1/d² = 4(h² + hk + k²)/(3a²) + l²/c² です。例えば BCC の鉄(a = 0.28665 nm)の (110) は d = 0.2027 nm、Cu Kα1(λ = 0.15406 nm)で 2θ = 44.67° です。波長が長いほど同じ面でも高い角度に出て、λ > 2d の面は回折しません。Mo Kα(0.0709 nm)では同じ範囲にずっと多くの反射が入り、Cr Kα(0.229 nm)では少なくなります。

構造因子と消滅則はなぜ起こるか

単位胞の中の原子 j(位置 xⱼ, yⱼ, zⱼ)から (hkl) の方向に散乱される波は、位相 2π(hxⱼ + kyⱼ + lzⱼ) だけずれています。これを足し合わせたものが構造因子 F = Σ fⱼ exp[2πi(hxⱼ + kyⱼ + lzⱼ)] で、強度は |F|² に比例します。BCC では体心の原子(½, ½, ½)の位相が π(h + k + l) なので、h + k + l が奇数の面では角の原子の波とちょうど逆向きになって打ち消し、(100)・(111)・(210) などが消えます。FCC では面心の3つの原子の位相が π(h + k)・π(h + l)・π(k + l) で、h・k・l の偶奇が混ざると和が 0 になります。ダイヤモンド構造は FCC を (¼, ¼, ¼) ずらして重ねたもので、さらに h + k + l = 4n + 2 の (200)・(222) などが消えます。2種類の原子があると、打ち消しが完全でなくなります。岩塩型の全部奇数の反射は 4(f_Cl − f_Na) で弱く、KCl では K⁺ と Cl⁻ の電子の数がどちらも 18 なのでほとんど消え、パターンは格子定数が半分の単純立方のように見えます。閃亜鉛鉱型の GaAs の (200) は f_Ga − f_As に比例してごく弱く、CsCl 型や規則化した Cu₃Au(L1₂)では、BCC・FCC なら消える位置に弱い「規則格子線」が出ます。規則格子線の強さは原子の規則度の2乗に比例するので、規則–不規則変態を調べる手がかりになります(このツールは完全に規則化した状態を計算します)。

強度を決めるもの: 多重度・原子散乱因子・LP 因子・温度因子

粉末の積分強度は I ∝ m |F|² LP exp(−2B s²) です(s = sinθ/λ)。多重度 m は同じ面間隔をもつ反射の数で、立方晶では {100} が 6、{110} が 12、{111} が 8、{hk0}・{hhl} が 24、{hkl} が 48 です。(511) と (333) のように別の形の面が同じ d に重なるときは、両方を足します。原子散乱因子 f は、原子の電子雲の広がりのために s が大きいほど小さくなり、s = 0 で電子の数 Z になります。このツールは International Tables Vol. C の Table 6.1.1.4 の係数(4つのガウス関数と定数の和、Cromer–Mann 型)で f0 を計算し、管球の線のときは Henke らの表から異常分散の補正 f′・f″ を足します。Cu Kα で鉄を測ると f′ ≈ −1.1 になり、高角の反射が少し弱くなります。LP 因子 (1 + cos²2θ)/(sin²θ cosθ) は、偏光(散乱で偏る分)とローレンツ因子(粉末の環のうち検出器に入る割合など)を合わせたもので、低角と 180° 近くで大きくなります。温度因子 exp(−2B s²) は原子の熱振動で高角の強度が下がる効果で、B = 8π²⟨u²⟩ です(⟨u²⟩ は平均二乗変位)。元素の B は Peng ら(1996)の 293 K の値を入れてあります。化合物は NaCl(1.48 Ų、Na 1.59 と Cl 1.38 の平均)と MgO(0.36 Ų、Mg 0.34 と O 0.37 の平均)だけ測定値を入れ、ほかの化合物と表にない元素は 0(温度因子なし)なので、知っていれば入力してください。B が 0 のままだと高角の反射が強めに出ます。

計算した強度比と、測った強度比がずれる理由

計算した相対強度は、理想的な粉末(細かく、向きがそろっていない)の積分強度です。実際には次の理由でずれます。(1) 配向: 板状・針状の粒子や圧延・めっき・薄膜の試料では、特定の面が表面に平行にそろい、その反射だけが強くなります。強度比のずれでいちばん大きく、ゼロにするのは難しい要因です。(2) 吸収: ブラッグ–ブレンターノ配置で十分に厚い試料なら吸収の補正は角度によりませんが、薄膜や少量の試料では高角ほど X 線が深く入って減り、強度比が変わります。表面の粗さや空隙も低角の強度を下げます。(3) 温度因子: B が大きい物質(アルカリ金属、イオン結晶など)では高角の強度が大きく下がります。(4) ピークの高さと面積: PDF カードの強度はピークの高さのことが多く、高角では Kα1 と Kα2 が分かれ、幅も広がるので、積分強度より小さく出ます。このツールの「曲線の高さ」はこの効果を含みます。(5) 粗い粒: 粒が大きい(目安で 10 µm 以上)と、回折に寄与する粒の数が少なく、強度が試料ごとにばらつきます。(6) ほかに、消衰(大きく完全な結晶で強い反射が頭打ちになる)、蛍光(Cu Kα で鉄やコバルトを測るとバックグラウンドが高くなる)、モノクロメーターや可変スリットの補正の違いもあります。

指数づけの考え方と、見分けられない組

立方晶では sin²θ = (λ²/4a²)·N なので、ピークの sin²θ の比は N = h² + k² + l² の比になります。単純立方は N = 1, 2, 3, 4, 5, 6, 8…(7・15 などは3つの平方数の和にならない)、BCC は 2, 4, 6, 8, 10, 12, 14…、FCC は 3, 4, 8, 11, 12, 16…、ダイヤモンド構造は 3, 8, 11, 16, 19… と並びます。このツールは、低角の3本のどれかが各構造の小さい方の N に当たると仮定して a の候補を作り、全部のピークに一番近い N を当て、合ったピークの数から「出るはずなのに見えない反射」の数の半分を引いた点、2θ のずれの順に比べて構造を選びます(見えない反射を数えないと、Kβ 線のような余分なピークまで合わせてしまう大きな単位胞が選ばれます)。注意する点が3つあります。SC と BCC は6本目までは比が同じで、7本目まで測らないと見分けられません。指数づけで分かるのはブラベー格子の型までで、NaCl は FCC、CsCl は単純立方と判定されます(原子の種類と配置は強度から決めます)。弱い反射が見えないと別の型に見えます。GaAs は弱い (200)・(420) が見えなければダイヤモンド構造と、KCl は全部奇数の反射がほとんど消えるので格子定数が半分の単純立方と判定されます。ピークが2〜3本しかないときは、別の構造や格子定数でも同じように合うことが多く、判定は確かではありません。合わないピークは、ほかの相、Kβ 線(Kβ フィルターがないとき、強い反射の低角側に出る)、Kα2、管球の汚れによる W Lα 線などを疑います。このツールは Kβ と Kα2 の位置に当たるかを表に示します。

格子定数を正確に求める: 系統誤差と外挿

角度の誤差 Δθ から来る格子定数の誤差は Δa/a = −cotθ·Δθ で、θ が 90° に近いほど小さくなります。そのため格子定数は高角のピークを重く見て求めます。ディフラクトメーターでいちばん大きい系統誤差は試料の高さのずれ(試料面がゴニオメーターの軸から s ずれる)で、Δ2θ ≈ −2s cosθ/R(R はゴニオメーターの半径)となり、Δd/d は cos²θ/sinθ に比例します。零点のずれは 2θ に一定の値を足します。このツールの「cos²θ/sinθ へ外挿」と「Nelson–Riley 関数へ外挿」は、各ピークの aᵢ をその関数に対して直線で当てはめ、θ = 90° の値を読む方法です。Nelson–Riley の関数 ½(cos²θ/sinθ + cos²θ/θ) は、もとはデバイ–シェラーカメラの吸収と偏心の誤差のために考えられたもので、ディフラクトメーターでもよく使われます。「最小二乗(a と零点のずれ)」は a と一定のずれ z を同時に求めます。いちばん確かな方法は、Si(NIST SRM 640 シリーズ)などの標準物質を混ぜて角度を補正する内部標準法です。表示する ± は当てはめの標準誤差で、系統誤差や温度(鉄なら 1 K で Δa/a ≈ 1.2 × 10⁻⁵)の影響は含みません。

シェラーの式と K の選び方

結晶子が小さいと、ブラッグの条件から少しずれた角度でも打ち消しが不完全になり、ピークが広がります。シェラーの式 D = Kλ/(β cosθ) は、その広がり β(2θ の幅、ラジアン)から、回折面に垂直な方向の結晶子の厚さの平均 D を求めます。K は、幅を半値幅(FWHM)で測るか積分幅(面積/高さ)で測るか、結晶子の形、大きさの分布、D をどの平均(体積で重みをつけた厚さなど)とするかで変わり、Langford と Wilson(1978)によれば 0.62〜2.08 の幅があります。Scherrer のもとの導出(立方体の結晶、ガウス型、FWHM)は 2√(ln2/π) ≈ 0.94 で、0.89 もよく引用されます(資料によって FWHM の値とも積分幅の値とも書かれ、一致しません)。形が分からないときは 0.9 を使い、K を明記するのが実務です。0.89 と 0.94 の差は 5 % ほどで、幅の測り方の誤差と同じくらいです。装置自体の幅 βi は、同じ条件で測った大きな結晶の標準試料のピーク幅で、ガウス型なら β² = βm² − βi²、ローレンツ型なら β = βm − βi で差し引きます。測った幅が装置の幅の2倍に満たないと誤差が大きく、目安として 100〜200 nm より大きい結晶子は求められません。D は「結晶子」(一続きの完全な結晶の領域)の大きさで、電子顕微鏡で見る粒子の大きさとは違うことがよくあります。

Williamson–Hall プロットで大きさとひずみを分ける

幅は結晶子の大きさだけでなく、結晶の中のひずみのばらつき(転位、積層欠陥、組成のゆらぎなど)でも広がります。大きさによる幅は Kλ/(D cosθ)、ひずみによる幅は 4ε tanθ で、角度への依存の仕方が違います。2つが足し算になると考えると β cosθ = Kλ/D + 4ε sinθ となり、横軸 4 sinθ、縦軸 β cosθ の点は直線に並び、切片から D、傾きから ε が求まります。これが Williamson–Hall プロットです。点が横に平らなら大きさだけ、原点を通る直線ならひずみだけによる広がりです。この方法は、どの向きでも大きさとひずみが同じ(等方的)と仮定しています。金属の (200) のように弾性率が小さい向きの反射が上に外れる、積層欠陥のある FCC で特定の反射が広がる、といったときは直線に乗りません。2つの広がりがガウス型なら2乗の和にする考え方もあり、結果は使う式でかなり変わるので、方法と K を書き添えて比べるのが大切です。より厳密には、ピークの形全体を使うワレン–アヴェルバッハ法やリートベルト法、全パターンのモデル化を使います。

固溶・応力によるピークの移動とベガード則

ブラッグの法則を微分すると Δθ = −(Δd/d) tanθ なので、格子が伸びるとピークは低角に動き、その量は高角ほど大きくなります。例えば Δd/d = 0.1 % のとき、2θ = 44.7° では Δ2θ ≈ −0.047°、2θ = 137° では −0.29° です。原子の大きさの違う元素が固溶すると格子定数が変わり、2元の固溶体では、組成 x に対して a が直線で変わるとみなすベガード則 a(x) = (1 − x)a_A + x a_B がよく使われます。InₓGa₁₋ₓAs や SiGe の組成、合金の濃度の見積もりがその例です。ただしベガード則は経験則で、Si–Ge や多くの金属の組ではわずかにずれ、端の格子定数の違いが小さい組(Ag–Au は 0.2 % ほど)では組成の分解能が出ません。薄膜では基板との格子の違いや熱膨張の差による応力で面間隔が変わるので、表面に平行な面を測る θ–2θ だけでは組成とひずみを分けられません。面内に等しい二軸の応力 σ がかかると、表面に平行な面のひずみは ε⊥ = −2ν σ/E で、このツールはこの関係から σ の目安を出します。実際の残留応力は、試料を傾けて測る sin²ψ 法で求め、弾性定数は反射ごとの X 線的弾性定数を使います。

測定の実務

粉末は乳鉢でよくすりつぶし(目安として数 µm〜10 µm)、ホルダーの面と試料の面をそろえて詰めます。面がずれると全部のピークが一方向に動きます(前の節の試料の高さのずれ)。Cu Kα は最もよく使われますが、鉄やコバルトを含む試料では蛍光でバックグラウンドが高くなるので、Co Kα や Fe Kα、回折側のモノクロメーターを使います。Kβ 線は Ni フィルター(Cu の場合。Co には Fe、Cr には V、Mo には Zr)や、モノクロメーター、エネルギー分解できる検出器で除きます。格子定数を精密に求めるなら、高角まで(Cu で 2θ ≈ 140° 前後まで)測り、ステップを小さく、計数時間を長くします。ピークの位置は頂点ではなく、関数を当てはめた中心(または重心)で読むのが基本で、Kα1 と Kα2 が分かれる高角では Kα1 の位置を使います。シェラーの式に使う装置の幅は、同じスリット・同じ条件で LaB₆(NIST SRM 660 シリーズ)などの標準試料を測って決めます。

このツールの前提と限界

パターンの計算は、完全に乱れた向きの細かい粉末、十分に厚い試料、消衰なし、全原子に共通の等方的な温度因子 B、という理想を仮定しています。原子散乱因子は中性原子(またはイオン)の球対称な近似で、結合による電子の偏りは入っていません。Cromer–Mann 型の係数は sinθ/λ < 2 Å⁻¹ で使う近似で、それより大きい(短い波長で高角)ところでは誤差が増えます。異常分散の補正は管球の線の波長でだけ入れ、吸収端のすぐ近くでは不正確です。ピークの形は擬フォークト関数(ローレンツ型とガウス型を半分ずつ)で、幅は FWHM = 定数 + 係数 × tanθ の単純な形です。Kα2 の強度は Kα1 の 1/2 としています。指数づけは立方晶の4つの格子型だけで、正方晶・六方晶などの指数づけや、複数の相が混ざったパターンの解析はできません。内部パラメーターをもつ構造はウルツ鉱型の u だけを扱い、ZnO のデータ集の値は中性子回折の測定値 0.3817(理想値 3/8 = 0.375 より少し大きい)です。定量分析(相の割合)、リートベルト解析、薄膜の斜入射測定には、専用のソフトを使ってください。

データの出典

元素の格子定数は周期表ツールと同じ ASM などの値(25 °C)、化合物の格子定数は Handbook of Mineralogy(NaCl・KCl・LiF・MgO・CaF₂・ZnS・ZnO)、Vurgaftman ら(2001、III–V 族半導体)、Kisi と Elcombe(1989、ウルツ鉱型 ZnS と ZnO の u、COD 1100044)です。原子散乱因子の係数は International Tables for Crystallography Vol. C(1992)Table 6.1.1.4、異常分散の補正は Henke, Gullikson と Davis(1993)の表、X線の波長は X-ray Data Booklet の Table 1-2(Bearden 1967 に基づく光子エネルギー)から λ = hc/E で求めた値、温度因子は Peng, Ren, Dudarev と Whelan(1996)の 293 K の値、NaCl は Finger と King(1978)の表にある 1 bar・室温の平均二乗変位から、MgO は Hazen(1976)の値です。例と検算のデータは NBS Circular 539(Cu・α-Fe)、Handbook of Mineralogy(NaCl)と、大学の資料に載った PDF カード 4-787(Al)・27-1402(Si)の値です。計算は Python で別に作ったプログラムと突き合わせ、Cu・α-Fe・Al・Si では位置と強度の順番が標準パターンと合うことを確かめています。NaCl も温度因子を入れると強度の順番が標準パターンとそろいます(B を 0 にすると高角の (420)・(422) が強く出すぎます)。

材料分析の問題を解く

Cu Kα線(波長0.15406 nm)を用いたXRDで、面間隔0.3135 nmのSi(111)面からの1次の回折ピークが現れる回折角2θはどれに最も近いか。

  1. A約14.2°
  2. B約28.4°
  3. C約58.9°
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正解:B. 約28.4°

ブラッグの法則 2d sinθ = nλ(n = 1)より、sinθ = 0.15406/(2 × 0.3135) ≈ 0.2457 で、θ ≈ 14.2°、回折角は 2θ ≈ 28.4° です。XRDの装置やデータでは、入射X線と回折X線のなす角2θを横軸にとるのが普通です。約14.2°はθをそのまま答えた誤り、約58.9°はブラッグの式の2を落として sinθ = λ/d とした誤りです。シリコン粉末の28.4°付近のピークは強くて鋭いので、回折角の校正の標準としてもよく使われます。

FCC構造の金属の粉末XRDで、最も低角の側に現れる回折ピークの指数はどれか。

  1. A(100)
  2. B(110)
  3. C(111)
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正解:C. (111)

FCCでは、h、k、lがすべて偶数か、すべて奇数のときだけ回折が現れ、偶数と奇数が混在すると単位胞内の4個の原子からの散乱が打ち消し合って強度が0になります(消滅則)。そのためピークは(111)、(200)、(220)、(311)…の順に現れ、h² + k² + l² が最小の(111)が最も面間隔が大きく、最も低角の側になります。(100)と(110)はどちらも偶数と奇数が混在するので、FCCでは現れません。BCCでは h + k + l が偶数の面だけが現れるので、最初のピークは(110)になり、ピークの並び方からFCCとBCCを見分けられます。

Cu Kα線(波長0.15406 nm)を用いた銅(FCC)の粉末XRDで、最も低角の側のピークが 2θ = 43.30° に現れた。銅の格子定数はどれに最も近いか。

  1. A約0.209 nm
  2. B約0.295 nm
  3. C約0.362 nm
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正解:C. 約0.362 nm

θ = 21.65° で sinθ ≈ 0.3689 なので、ブラッグの法則から d = λ/(2 sinθ) ≈ 0.2088 nm です。FCCで最も低角の側のピークは(111)なので、a = d × √(1² + 1² + 1²) = 0.2088 × √3 ≈ 0.362 nm となり、銅の格子定数(約0.3615 nm)と一致します。約0.209 nm は面間隔dそのもので、格子定数への換算をしていません。約0.295 nm は最初のピークを(110)とみなして √2 を掛けた値で、BCCの消滅則を当てはめた誤りです。ピークの指数づけを正しく行うことが、格子定数を決める前提になります。

XRDで 2θ = 38.2° に現れたピークの半値幅(装置による広がりを除いたもの)が0.40°だった。シェラーの式 D = Kλ/(β cosθ) で K = 0.9、λ = 0.15406 nm とすると、結晶子サイズはどれに最も近いか。

  1. A約0.37 nm
  2. B約25 nm
  3. C約21 nm
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正解:C. 約21 nm

半値幅はラジアンに直して β = 0.40 × π/180 ≈ 6.98×10⁻³ rad とし、θ には2θの半分の19.1°(cosθ ≈ 0.945)を使います。D = 0.9 × 0.15406/(6.98×10⁻³ × 0.945) ≈ 21 nm です。約0.37 nm はβを度のまま0.40として代入した誤り、約25 nm はθの代わりに2θの余弦 cos38.2° を使った誤りです。シェラーの式で求まるのは結晶粒そのものではなく、そろって回折する結晶子の大きさです。不均一なひずみもピークを広げるので、厳密にはウィリアムソン・ホール法などで両者を分けます。結晶子が大きくなると広がりが小さすぎて、精度よく求められなくなります。

よくある質問

計算した強度と PDF カードの強度が合いません。どちらが正しいのですか?

どちらも正しく、表している量が違うことが多いです。このツールの「積分強度」はピークの面積で、カードの強度はふつうピークの高さです。高角では Kα1 と Kα2 が分かれ、幅も広がるので、高さは面積より小さくなります。表の「曲線の高さ」(幅と Kα2 を含めた値)と比べてください。それでも大きくずれる反射があるときは、配向(特定の面がそろう)を最初に疑います。

ブラッグの法則の n は何ですか?

回折の次数です。n = 2 の (110) の回折は、面間隔が半分の (220) の1次の回折と同じ角度に出ます。そのため XRD では n = 1 とし、(220) のように指数を整数倍にした面で表します。

BCC で (100) のピークが出ないのはなぜですか?

体心の原子が、角の原子がつくる (100) 面のちょうど中間に同じ密度の面をつくり、そこからの散乱波が半波長ずれて打ち消し合うからです。構造因子では F = f[1 + e^{iπ(h+k+l)}] で、h + k + l が奇数なら 0 になります。

Cu Kα 線の波長はいくつですか?

Kα1 が 0.15406 nm、Kα2 が 0.15444 nm で、強度比はおよそ 2 : 1 です。分けずに扱うときは重み付き平均 (2λ1 + λ2)/3 ≈ 0.15419 nm を使います(資料によって 0.15418 nm)。このツールの値は X-ray Data Booklet の光子エネルギーから λ = hc/E で求めたものです。Co Kα1 は 0.17890 nm、Cr Kα1 は 0.22898 nm、Fe Kα1 は 0.19361 nm、Mo Kα1 は 0.07093 nm です。

シェラーの式の β は、2θ の幅ですか θ の幅ですか?

2θ の幅をラジアンに直したものです。角度の単位(度)のまま入れると 57.3 倍違い、θ の幅を使うと2倍違います。どちらもよくある間違いです。また、装置の幅を差し引かないと、大きさを小さく見積もります。

結晶子の大きさと粒子の大きさは同じですか?

同じとは限りません。XRD で求まるのは、一続きの完全な結晶の領域(結晶子、ドメイン)の大きさで、1つの粒子が多くの結晶子からできていれば、粒子は結晶子よりずっと大きくなります。逆に、ひずみによる広がりを大きさとみてしまうと、結晶子を小さく見積もります。

格子定数の ± はどこまで信用できますか?

表示する ± は当てはめの残差からの標準誤差で、ピークの読み取りのばらつきを表します。試料の高さのずれや零点のずれ、温度の違いといった系統誤差は含みません。系統誤差を減らすには、外挿や零点つきの当てはめを使い、できれば Si などの内部標準で角度を補正します。

六方晶や正方晶の試料も指数づけできますか?

このツールの指数づけは立方晶だけです。六方晶(HCP、ウルツ鉱型)は「パターン」のモードで a と c を入れて、計算した位置と測ったピークを見比べてください。一般の結晶系の指数づけには、ITO・TREOR・DICVOL などの専用のプログラムを使います。

関連する用語

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