結晶構造ビューア(単位格子・すき間・ミラー指数)

単位格子を立体の図で描き、ドラッグ・スワイプ・ボタンで回せます。原子を点で描くと位置が、剛体球で描くと接している様子がわかります。単位格子あたりの原子数・配位数・充填率と、原子半径rと格子定数aの関係を、式と数値で示します。八面体・四面体のすき間の位置・数・入る球の半径比を描き分け、立方晶では(hkl)を入れるとその面を、[uvw]を入れると方向の矢印を描いて、面間隔・面の上の原子の数・面密度・線密度を計算します。すべり系のボタンを押すと、すべり面とすべり方向を1組描きます。既定は銅(FCC、a = 0.3615 nm)の(111)面です。

構造と表示

図と結果

単位格子の値

すき間(格子間位置)

面と方向

すべり系

ほかのツールで続ける

原子を同じ大きさの剛体球とみなし、最も近い原子どうしが接するとして計算しています。すき間の半径比は、すき間の中心から最も近い原子の中心までの距離から原子半径を引いた値を、原子半径で割ったものです。面密度は原子の中心が面の上にあるものを数え、面の充填率は面の上の原子の断面(半径rの円)が占める割合です。実際の原子の大きさは結合の種類や配位数で変わるので、値は幾何学から決まる目安です。

図の見方と回し方

立方晶は立方体の単位格子、HCPは六角柱で描いています。x・y・z(HCPは a₁・a₂・c)の矢印は、原点Oから単位格子の稜の先へ延ばした結晶軸です。原子は、単位格子に属する割合で色を分けていて、角(1/8、HCPの頂点は1/6)、辺(1/4)、面(1/2)、内部(1)です。図をドラッグして回せます。スマートフォンでは横のスワイプで回り、縦のスワイプではページがスクロールするので、上下の傾きは ▲▼ のボタンで変えます。「[111]から見る」を押すと体対角線の方向から見た図になり、FCCでは最密面の原子が六角形に並ぶ様子がわかります。点の表示は位置を見るため、剛体球の表示は原子が接している方向(SCは稜、BCCは体対角線、FCCは面対角線)を見るためのものです。ダイヤモンド構造の点の表示では、最も近い原子との結合も線で描きます。

原子数・充填率・原子半径の求め方

単位格子あたりの原子数は、位置ごとの割合を掛けて足します。FCCは 8 × 1/8 + 6 × 1/2 = 4、BCCは 8 × 1/8 + 1 = 2、ダイヤモンド構造はFCCの4個に内部の4個を加えて8個、HCPの六角柱は 12 × 1/6 + 2 × 1/2 + 3 = 6 です。充填率は n × (4/3)πr³/a³ で、接する方向から決まる a と r の関係を入れると r が消え、SCは π/6 ≈ 0.52、BCCは √3π/8 ≈ 0.68、FCCは π/(3√2) ≈ 0.74、ダイヤモンド構造は √3π/16 ≈ 0.34 になります。格子定数を入れると、原子半径と最近接原子間距離をnmで示します。例えばα鉄(BCC、a = 0.2866 nm)では r = √3a/4 ≈ 0.124 nm、銅(FCC、a = 0.3615 nm)では r = √2a/4 ≈ 0.128 nm です。

八面体すき間と四面体すき間

すき間(格子間位置)は、まわりを囲む原子の数で呼び分けます。6個の原子が八面体の頂点に並ぶのが八面体すき間、4個が四面体の頂点に並ぶのが四面体すき間です。入る球の半径は、中心から囲む原子の中心までの距離から原子半径rを引いた値です。FCCでは八面体すき間までの距離が a/2 = √2r なので半径比は √2 − 1 ≈ 0.414、四面体すき間までは √3a/4 = √(3/2)r なので √(3/2) − 1 ≈ 0.225 です。数は単位格子あたり八面体すき間4個(体心1 + 稜の中点 12 × 1/4)、四面体すき間8個で、原子1個あたり八面体1個・四面体2個です。HCPも原子1個あたりの数と半径比はFCCと同じです。表の「入る球の半径」は、入れた格子定数で計算した値です。

BCCのすき間は、合計は多いが1つ1つは小さい

BCCは充填率が約0.68とFCC(約0.74)より低いので、すき間の合計(1 − 充填率)は約0.32と、FCCの約0.26より大きくなります。しかし、すき間は原子1個あたり八面体3個・四面体6個と多数に分かれていて、入る球の半径は四面体すき間で約0.291r、八面体すき間で約0.155rしかありません。BCCの八面体すき間はゆがんだ八面体で、1つの軸の向きの2個の原子は a/2 の近さにあり、残りの4個は a/√2 と遠くにあります。入る球の大きさは近い2個で決まります。「すき間」で八面体すき間を選ぶと、近い2個を太い線、遠い4個を破線で結んで描きます。α鉄の炭素の最大固溶限(約0.022 wt%)がγ鉄(約2.14 wt%)よりずっと小さいのはこのためです。

ミラー指数の面の描き方と、面の上の原子の数え方

(hkl)を入れると、x・y・z軸との切片が 1/h、1/k、1/l の面を単位格子の中に描きます。指数が0の軸とは交わりません(切片∞)。負の指数があるときは、原点をその軸の1の位置(O′)へ移して切片をとります。破線は隣の平行な面で、その間隔が面間隔 d = a/√(h² + k² + l²) です。面の上の原子は、原子の中心が面の上にあるものを、切り口の多角形の中にある割合で数えます。切り口の角にある原子はその角の内角の割合(正三角形なら 60°/360° = 1/6、長方形なら1/4)、辺の上は1/2、内側は1です。FCCの(111)は角 3 × 1/6 + 辺 3 × 1/2 = 2個が面積 (√3/2)a² にあるので、面密度は 4/(√3a²) で、銅(a = 0.3615 nm)では約17.7個/nm²です。BCCの(110)は角 4 × 1/4 + 内側1 = 2個が面積 √2a² にあり、面密度は √2/a² です。

面密度・線密度とすべり系の読み方

原子が最も密に並ぶ面と方向で、すべりが起こりやすくなります。面の充填率はFCCの{111}で π/(2√3) ≈ 0.907、BCCの{110}で約0.833で、方向の線の充填率はFCCの<110>とBCCの<111>で1(原子が接して並ぶ)です。すべり系のボタンを押すと、すべり面と、その面の上の原子の列に沿ったすべり方向の矢印を描き、方向が面の中にあること(hu + kv + lw = 0)を確かめます。FCCの{111}<110>は4面 × 3方向で12系統、BCCの{110}<111>は6面 × 2方向で12系統で、BCCでは{112}<111>と{123}<111>も働きます。HCPの底面すべり{0001}<11-20>は3系統しかなく、独立なものは2つだけなので、多結晶の変形に必要な5つに足りません。

XRDのツール・周期表のツールとのつなぎ方

このツールのURLには入れた値が残ります。例えば「…/tools/crystal-structure-viewer/?type=bcc&a=0.28665」のように、構造(type に sc・bcc・fcc・hcp・diamond)と格子定数(a、nm)を付けて開くと、その条件で表示します。HCPでは軸比(ca に c/a)も渡せます。「XRD計算ツールで…を見る」のリンクは、表示中の構造・格子定数・面の指数を入れた状態でXRD計算ツールを開き、ブラッグの法則による回折角2θと、消滅則で回折するかどうかを示します。元素ごとの結晶構造と格子定数は、材料の周期表で調べられます。周期表で調べた格子定数をこのツールに入れると、その元素の原子半径・面密度・すき間の大きさがわかります。

結晶構造の問題を解く

原子を同じ大きさの剛体球とみなしたとき、FCC構造の原子充填率(単位胞の体積に占める原子の体積の割合)はどれか。

  1. A約0.68
  2. B約0.74
  3. C約0.52
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正解:B. 約0.74

FCCでは原子が面の対角線方向で接するので √2a = 4r、すなわち a = 2√2r です。単位胞に原子が4個あるので、充填率は 4×(4/3)πr³ / (2√2r)³ = π/(3√2) ≈ 0.74 になります。約0.68はBCC(体対角線方向で接して a = 4r/√3、原子2個)の値、約0.52はSC(a = 2r、原子1個で π/6)の値です。HCPも理想的な c/a のときは0.74で、FCCと並ぶ最密充填構造です。ただし、すき間1つ1つの大きさは逆で、充填率の低いBCCのほうが小さくなります(八面体すき間に入る球の半径はFCCで約0.41r、BCCで約0.15r)。すき間の合計は多くても、小さく分かれているためです。

立方晶で、x軸と1a、y軸と2aで交わり、z軸とは平行で交わらない面のミラー指数はどれか。

  1. A(120)
  2. B(102)
  3. C(210)
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正解:C. (210)

ミラー指数は、各軸との切片を格子定数を単位として表し、その逆数をとって最小の整数比にしたものです。切片は1、2、∞なので、逆数は1、1/2、0となり、2倍して(210)です。(120)は切片の1、2を逆数にせずそのまま並べた誤りです。z軸に平行な面はz軸の切片が∞なので必ず l = 0 となり、3番目の指数が0でない(102)も誤りです。面が原点を通る場合は、原点を隣の格子点へ移してから切片をとります。

FCC金属の最密面と最密方向の組み合わせとして正しいものはどれか。

  1. A{110}面と<111>方向
  2. B{111}面と<110>方向
  3. C{100}面と<100>方向
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正解:B. {111}面と<110>方向

FCCでは{111}面が最も原子が密に詰まった面で、その面内で原子は面対角線の方向、つまり<110>方向に接しています。FCC金属のすべりはこの{111}<110>で起こり、{111}面4種類にそれぞれ<110>方向が3つあるので、すべり系は12です。{110}面と<111>方向はBCCの最密面と最密方向で、FCCと取り違えやすい組み合わせです。{100}面と<100>方向はSCの最密面と最密方向にあたり、FCCでは最密ではありません。

よくある質問

(200)と(100)は同じ面ですか?

向きは同じですが、(200)は切片が1/2の面で、面間隔は(100)の半分です。このツールで(200)を入れると、単位格子の真ん中に面を描きます。FCCやBCCでは(200)の面の上にも原子が並ぶので、XRDでは(100)が消えて(200)が現れます。SCの(200)の面には原子がなく、XRDの(200)は(100)からの2次の反射にあたります。

(000)や小数を入れるとどうなりますか?

(000)は面を、[000]は方向を表さないので、図には描かずにそう表示します。指数は −9〜9 の整数で、小数は四捨五入します。負の指数は「−1」のように入れると、結果では数字の上に横棒を付けて表示します。

面密度が、単位格子の切り口だけで数えた値と違うことがあるのはなぜですか?

(100)(110)(111)のような低い指数の面では、どの単位格子の切り口も同じ形になるので、1つの切り口で数えた値が面全体の平均と一致します。(112)や(123)のような面では、隣の単位格子で切り口の形が変わるので、1つの切り口だけでは平均になりません。このツールは、格子の面の間隔と単位胞の体積から計算した面全体の平均を面密度として示し、違う場合は切り口だけで数えた値も添えます。

BCCでは四面体すき間のほうが大きいのに、α鉄の炭素が八面体すき間に入るのはなぜですか?

炭素の原子はどちらのすき間よりも大きいので、まわりの鉄原子を押し広げて入ります。八面体すき間では近い2個を押し広げればよく、四面体すき間に入るより全体のゆがみのエネルギーが小さくなると考えられています。その結果、炭素の入った格子は一方向に伸び、焼入れでできるマルテンサイトが正方晶になる原因になります。剛体球の半径比は、どこに入りやすいかの目安の1つです。

HCPでミラー指数の面を入れられないのはなぜですか?

HCPでは、底面の中に120°ずつ離れた3本の軸 a₁・a₂・a₃ と c 軸をとるミラー・ブラベー指数(hkil、i = −(h + k))を使うのが普通で、立方晶の d = a/√(h² + k² + l²) は使えないからです。このツールでは、代表的な底面(0001)と柱面(10-10)、すべり系を選んで描き、c/a による違いを示します。

原子半径は、どの値を使っていますか?

入れた格子定数から、最も近い原子どうしが接するとして計算した剛体球の半径です。周期表ツールに載せている金属結合半径(12配位の値)とは、配位数の違うBCCなどで少し違います。また、HCPで c/a が理想値からずれているときは、最も近い方向の原子どうしだけが接するとして計算しています。

関連する用語

ミラー指数 原子充填率 体心立方格子 面心立方格子 六方最密構造 消滅則 ブラッグの法則 転位

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