複合材料デザイナー

繊維と母材をデータ集から選ぶと、一方向材の性質、積層板の剛性と強さ、短繊維の効率、金属との重さ比べを1つのページで計算します。既定値の炭素繊維 T300 とエポキシ 8552 の体積率 60 % の一方向材では、繊維方向のヤング率は複合則で 139.9 GPa で、東レのデータシートの実測値(60 %、別のエポキシ)140 GPa とよく合います。垂直方向は逆複合則で 7.96 GPa、Halpin–Tsai で 9.46 GPa です。積層板のタブでは、T300/5208 の [0/±45/90]s に Nx = 100 N/mm をかけると、Tsai–Wu で 90° の層が荷重の 2.76 倍で最初に壊れます。

入力

結果

ミクロ力学の式は、繊維がまっすぐ一様に並び、繊維と母材が完全に接着し、どちらも線形弾性という仮定の近似です。古典積層理論は薄い板の平面応力(層の間の応力や縁の効果は扱わない)、破壊則は層ごとの応力に当てはめる経験的な式です。設計には、使う材料の試験値と安全率を使ってください。

複合則の導き方と、どこまで合うか

繊維に平行に引っ張ると、繊維と母材は並列のばねのように同じだけ伸びます(等ひずみ)。応力は体積率で重みをつけた平均になり、E1 = VfEf1 + VmEm です。繊維に垂直に引っ張ると、直列のばねのように同じ応力を受けるとみなせて(等応力)、1/E2 = Vf/Ef2 + Vm/Em になります。この2つは Voigt と Reuss の式と呼ばれます。エネルギー原理から、等応力の式は弾性率の厳密な下限になり、等ひずみの式は繊維と母材のポアソン比が等しいときの上限です(ポアソン比が違うと、E1 の真の値は複合則よりごくわずかに大きくなります。Hill 1964)。繊維方向では実際のひずみがほぼ一様なので、E1 の式はよく合います。たとえば T300(230 GPa)を Vf 60 % で弾性率 4.67 GPa のエポキシに入れると 139.9 GPa で、東レのデータシートの一方向材(Vf 60 %)の 140 GPa とほぼ同じです。一方、垂直方向では繊維のあいだの母材に応力が集中し、繊維が荷重の一部を横から受け持つので、等応力の式は低すぎます。

Halpin–Tsai の式と ξ の意味

Halpin–Tsai の式 P = Pm(1 + ξηVf)/(1 − ηVf)、η = (Pf/Pm − 1)/(Pf/Pm + ξ) は、弾性論の厳密解に合うように作られた内挿の式です。ξ → 0 で逆複合則、ξ → ∞ で複合則になり、ξ は繊維の形と並びで「どれだけ補強が効くか」を表します。円い繊維が正方に並ぶとき、E2 には ξ = 2、G12 には ξ = 1 がよく使われます。体積率が 60 % を超えると繊維どうしの相互作用で値が上がるので、G12 に ξ = 1 + 40Vf¹⁰(Hewitt と de Malherbe)を使うこともあります。炭素繊維とアラミドは繊維そのものが異方性で、径方向の弾性率は数 GPa から 20 GPa 程度と、繊維方向の 1/10 以下です。E2 の計算に繊維方向の Ef1 を入れると、E2 を大きく見積もりすぎます。

熱膨張(Schapery の式)と残留応力

繊維方向の熱膨張は、剛性で重みをつけた平均 α1 = (Ef1αf1Vf + EmαmVm)/(Ef1Vf + EmVm) です。炭素繊維は繊維方向に縮む(αf1 < 0)うえに母材よりずっと剛いので、α1 はほぼ 0 になります。垂直方向は、繊維方向に拘束された母材がポアソン効果で横にふくらむぶんが加わり、α2 = Vf(αf2 + νf12αf1) + Vm(1 + νm)αm − α1ν12 と、母材だけの値に近い大きな値になります。この差のため、硬化温度から室温へ冷えるとき(ΔT はおおむね −100 K から −160 K)、積層板の層どうしが互いに縮みを妨げて熱残留応力が生じます。90° の層では垂直方向の引張になり、最初の層の破壊を早めます。非対称な積層板が冷えると反るのも同じ理由です。

縦方向の引張強さ: 破断ひずみで決まる

一方向材を繊維方向に引っ張ると、繊維と母材は同じひずみになります。ふつうの樹脂は炭素繊維の破断ひずみ(T300 で 1.5 %)より大きく伸びるので、繊維が先に切れ、強さは σ1u = Vfσf + Vmσm′ です(σm′ は繊維が切れるときの母材の応力)。繊維が少ないと、繊維が切れたあとも母材だけで Vmσm まで持つので、補強の意味があるのは Vf が臨界体積率 Vcrit を超えたときです。母材のほうが先に割れる組み合わせ(破断ひずみ 4.8 % の E ガラスと脆いエポキシなど)では、割れたあと繊維だけで持つか、全体が壊れるかの2つの式の大きいほうになります。実際の強さは、繊維の強さのばらつき(弱い所から切れて隣の繊維に応力が集まる)や並びの乱れで、この値より低くなります。東レの T300 の一方向材の実測 1820 MPa は、この式の約 85 % です。圧縮強さは繊維の微小な座屈(キンク帯)で決まるので、この式では出せません。

体積率・質量率・空隙の換算

ミクロ力学の式に入れるのは体積率です。プリプレグや樹脂の配合は質量で管理するので、密度で Vf = (Wf/ρf)/(Wf/ρf + Wm/ρm) と換算します。炭素繊維(1.77 g/cm³)と PEEK(1.30 g/cm³)で樹脂の質量率 42 %(Wf 58 %)なら Vf は約 50 % です。実際の積層板の体積率は、樹脂を燃やすか溶かして繊維の質量を量り(ASTM D3171)、空隙は密度から求めます(ASTM D2734)。空隙は剛性 0 の相として密度と E1 を下げるだけでなく、応力集中としてはたらき、垂直方向の弾性率や曲げの性質を空隙 1 % あたり約 1.5 % 下げ、層間せん断強さをさらに大きく下げるという報告があります。同じ太さの円い繊維を詰める上限は、正方の並びで π/4 = 78.5 %、六方の並びで π/(2√3) = 90.7 % です。

成形法と実際の体積率

体積率は材料ではなく成形で決まります。手積み(ハンドレイアップ)は体積率が低く空隙も多くなりやすく、真空で樹脂を含浸させる成形(VARTM など)は手積みより高い体積率になります。オートクレーブで硬化するプリプレグは体積率を高くそろえやすく、東レの繊維の資料の一方向材の試験値も Vf 60 % に換算して示されています。射出成形の短繊維強化樹脂は、繊維が短く、流れに沿って向きが層ごとに変わるので、連続繊維の値とは別の考え方(短繊維のタブ)が要ります。同じ繊維と樹脂でも、成形法によって体積率・空隙・繊維のうねりが違い、剛性と強さが変わることを、データ集の値を使うときは忘れないでください。

古典積層理論の仮定と ABD 行列

古典積層理論は、薄い板の直線が曲げたあとも直線で板に垂直なまま(Kirchhoff の仮定)、各層は平面応力で線形弾性、層どうしは完全に接着している、と仮定します。すると板の中のひずみは ε = ε⁰ + zκ(ε⁰ は中央面のひずみ、κ は曲率)で、各層の応力は σ = Q̄(ε⁰ + zκ) です。これを厚さで積分すると、合力 N と合モーメント M は {N; M} = [A B; B D] {ε⁰; κ} で結ばれます。A = ΣQ̄t は面内の剛性、D = ΣQ̄(z³の差)/3 は曲げの剛性、B = ΣQ̄(z²の差)/2 は伸びと曲げの連成です。等価な面内の弾性率は Ex = 1/(h a*11) のように ABD の逆行列から求めます。層の間の応力(はく離の原因)、自由縁の効果、厚い板のせん断変形はこの理論には入っていません。

対称・釣り合い・疑似等方

中央面に対して同じ角度の層が鏡のように並ぶ対称積層では B = 0 になり、引っ張っても曲がらず、冷えても反りません。+θ と −θ の層を同じ数だけ入れた釣り合い積層では A16 = A26 = 0 になり、引っ張ってもせん断ひずみが出ません。ただし [±45]s のように釣り合っていても、+45° と −45° の層の高さが違うので D16・D26 は 0 にならず、曲げるとねじれます。[0/±45/90]s のように、180°/n ずつ角度を変えた層(n ≥ 3)を同じ数だけ入れると、A は面内で等方になり、どの向きに引っ張っても同じ Ex になります(疑似等方)。ただし D は等方にならず、曲げの剛性は向きで変わります。どの向きから荷重が来るか分からない部品や、穴をあける部品で疑似等方積層がよく使われるのは、繊維のない向きの弱さを避けられるからです。そのぶん、一方向材の比剛性の高さの多くを手放します(T300/5208 で E1 181 GPa に対し、疑似等方の Ex は約 70 GPa)。

破壊則の違いと、最初の層・最後の層

最大応力則は、層の 1-2 座標の応力 σ1・σ2・τ12 のどれかが、その向きの強さ(X・X′・Y・Y′・S)に届いたら壊れるとします。成分どうしの相互作用はありませんが、壊れ方(繊維の引張・母材の引張・せん断など)が分かります。Tsai–Hill は von Mises の考え方を異方性に広げた2次式で、成分の組み合わせの効果が入ります。引張と圧縮で強さの違う材料には、応力の符号で X・Y を選んで使います。Tsai–Wu は1次と2次の項を持つテンソル多項式で、引張と圧縮の違いを1つの式で扱えます。F12 は2軸の試験がないと決まらず、F12* = −1/2(von Mises に相当)がよく使われます。世界規模の破壊則の比較(WWFE)では、どの破壊則もすべての試験を予測できたわけではありませんでした。積層板では、最初の層が壊れても(多くは 90° 層の母材の割れ)残りの層で荷重を持てるので、最初の層の破壊(FPF)と最後の層の破壊(LPF)を分けて考えます。

短繊維: 臨界繊維長と効率

短い繊維には、端から界面のせん断応力 τ で少しずつ荷重が入ります。力のつり合い πd²σ/4 = πd(l/2)τ から、繊維の中央で応力が繊維の強さ σf に届く最短の長さが臨界繊維長 lc = σfd/(2τ) です。l が lc より短い繊維は切れずに抜け、長くても両端の lc/2 は十分に働きません。Kelly–Tyson の式は、界面が一定の τ で滑るとして、そろった短繊維の強さを l ≥ lc で Vfσf(1 − lc/2l) + Vmσm′ と見積もります。弾性率については、Cox のシアラグ理論が、繊維と周りの母材のせん断のつながりから長さの効率 ηl = 1 − tanh(βl/2)/(βl/2) を与えます。向きのばらつきは、Krenchel の配向の効率 η0 = Σ an cos⁴θn(面内でばらばらなら 3/8、3次元なら 1/5)で弾性率に掛けます。τ は繊維の表面処理やサイジングで大きく変わるので、フラグメンテーション試験や引き抜き試験で測った値を使ってください。

同じ剛性・重さで比べる

材料を比べるときは、何で設計が決まるかで比べ方が変わります。引張の棒の剛性で決まるなら重さは ρ/E に、板の曲げ剛性で決まるなら ρ/∛E に、強さで決まるなら ρ/σ に比例します(Ashby の材料指標)。板の曲げ剛性は厚さの3乗で増えるので、密度の低い材料ほど得をします。このツールの既定の値で鋼(S355)を 1 とすると、同じ曲げ剛性の板の重さはアルミ合金 6061-T6 が約 0.50、[0/±45/90]s の CFRP(NTNU の CF A、Vf 55 %)が約 0.28、同じ並びの GFRP(E ガラス)が約 0.50 です。引張の剛性では、疑似等方の CFRP の Ex は約 50 GPa でアルミ合金(69 GPa)より低く、重さの差は約 0.85 対 1.05 と小さくなります。GFRP は引張の剛性では鋼の約 2.7 倍重く、曲げ剛性の板でもアルミ合金とほぼ同じ重さ(約 0.50)にとどまります。強さでは、最初の層の破壊(90° 層の割れ)で比べると GFRP は鋼とほぼ同じ重さ(約 1.1)で、最後の破壊まで見ればもっと有利になります。比べるのタブは、この計算を同じ条件で並べ、材料選びチャートの指標の線へつなげます。

この計算が成り立たないとき

繊維のうねり・波打ち(織物、縫った布)、繊維の並びの乱れ、高い体積率での繊維どうしの接触があると、ミクロ力学の式から外れます。母材の非線形性(せん断の応力–ひずみが曲がる)、温度と吸湿による母材の軟化、粘弾性(クリープ)はここでは扱っていません。古典積層理論は、層の間の応力、自由縁や穴の近くの3次元の応力、厚い板のせん断変形を扱いません。破壊則は層の応力を見るだけで、はく離・衝撃による損傷・疲労・圧縮の座屈は別に考える必要があります。データ集の値は、メーカーの代表値や教科書・講義資料の値で、設計の許容値ではありません。点線の欄は出典のない仮の値です。

複合材料の問題を解く

炭素繊維とエポキシ樹脂からなる複合材料で、炭素繊維の質量分率が70%である。炭素繊維の密度を1.80 g/cm³、エポキシ樹脂の密度を1.20 g/cm³とし、ボイド(空隙)はないとすると、繊維の体積分率はどれに最も近いか。

  1. A約70%
  2. B約78%
  3. C約61%
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正解:C. 約61%

体積は質量を密度で割って求めます。複合材料100 gでは、繊維の体積が 70/1.80 ≈ 38.9 cm³、樹脂の体積が 30/1.20 = 25.0 cm³ なので、繊維の体積分率は Vf = 38.9/(38.9 + 25.0) ≈ 0.61、約61% になります。繊維は樹脂より密度が大きいので、体積分率は質量分率より小さくなります。約70% は質量分率をそのまま体積分率とした誤りで、複合則の計算には体積分率を使う必要があります。約78% は、繊維と樹脂の密度を入れ替えて計算した値です。実際の成形品にはボイドが含まれることがあり、密度の測定や燃焼法で Vf とボイド率を確かめます。

一方向にそろった連続繊維の複合材料について、複合則の等ひずみの式と等応力の式の使い分けとして正しいものはどれか。

  1. A繊維に平行に引っ張るときは等ひずみの式、垂直に引っ張るときは等応力の式で近似する
  2. B繊維に平行に引っ張るときは等応力の式、垂直に引っ張るときは等ひずみの式で近似する
  3. Cどちらの方向でも等ひずみの式が成り立ち、ヤング率は繊維の向きによらない
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正解:A. 繊維に平行に引っ張るときは等ひずみの式、垂直に引っ張るときは等応力の式で近似する

繊維に平行に引っ張ると、繊維と母材は並列につながったばねのように同じだけ伸びるので、等ひずみの式 E₁ = VfEf + VmEm が成り立ちます。繊維に垂直に引っ張ると、繊維と母材は直列のばねのように同じ応力を受けるので、等応力の式 1/E₂ = Vf/Ef + Vm/Em で近似します。同じ体積分率で比べると、等ひずみの式はヤング率の上限、等応力の式は下限を与えます(フォークトとロイスの限界)。平行に等応力、垂直に等ひずみの式を当てる選択肢は、平行と垂直を逆にした誤りです。一方向材のヤング率は繊維方向と垂直方向で大きく違い、方向によらないという説明も誤りです。実際の垂直方向のヤング率は、等応力の式より少し大きくなることが多く、ハルピン・ツァイの式などで補正します。

ガラス繊維(ヤング率72 GPa)を体積分率50%で一方向に入れた樹脂(ヤング率3.0 GPa)の複合材料がある。繊維に垂直な方向のヤング率を、等応力の複合則で見積もるとどれに最も近いか。

  1. A約5.8 GPa
  2. B約37.5 GPa
  3. C約0.17 GPa
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正解:A. 約5.8 GPa

繊維に垂直な方向では、繊維と樹脂が直列に並んで同じ応力を受けると考え、1/E₂ = Vf/Ef + Vm/Em を使います。1/E₂ = 0.50/72 + 0.50/3.0 = 0.00694 + 0.1667 = 0.1736 GPa⁻¹ なので、E₂ = 1/0.1736 ≈ 5.76 GPa、約5.8 GPa です。約37.5 GPa は等ひずみの式 0.50 × 72 + 0.50 × 3.0 で求めた繊維方向のヤング率です。約0.17 GPa は逆数を取り忘れた値です。垂直方向のヤング率は、柔らかい樹脂のヤング率に近い値にとどまり、繊維方向の約15%(約6.5分の1)しかありません。一方向材を垂直方向に力がかかる部品に使わないのはこのためです。

一方向CFRP(繊維方向のヤング率140 GPa、密度1.6 g/cm³)と鋼(ヤング率210 GPa、密度7.9 g/cm³)の、繊維方向の比弾性率(ヤング率/密度)の比 CFRP/鋼 はどれに最も近いか。

  1. A約0.67
  2. B約3.3
  3. C約4.9
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正解:B. 約3.3

比弾性率は、CFRP が 140/1.6 = 87.5、鋼が 210/7.9 ≈ 26.6(単位はどちらも GPa/(g/cm³))なので、比は 87.5/26.6 ≈ 3.3 です。ヤング率そのものは CFRP のほうが小さいものの、密度が約5分の1なので、同じ重さで比べると約3.3倍の剛性になります。約0.67 はヤング率だけを比べた値(140/210)、約4.9 は密度の比(7.9/1.6)だけを見た値です。ただし、この値は繊維方向だけのもので、繊維に垂直な方向では比弾性率は鋼よりはるかに小さくなります。実際の構造では積層によって方向を補うので、比剛性の利点はこの値より小さくなります。

母材の中に埋め込まれた短繊維を繊維方向に引っ張ったとき、繊維の中の引張応力の分布として正しいものはどれか。界面は滑らずに一定のせん断応力で荷重を伝えるとする。

  1. A両端でほぼゼロで、界面のせん断によって端から離れるほど増え、十分長ければ中央部で一定の値になる
  2. B界面のせん断応力が全長で一定なので、繊維の応力も全長にわたって一様で、繊維の長さによらない
  3. C端面から直接荷重を受けるので繊維の両端で最大になり、中央に向かって小さくなる
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正解:A. 両端でほぼゼロで、界面のせん断によって端から離れるほど増え、十分長ければ中央部で一定の値になる

繊維の端面からはほとんど荷重が伝わらないので、繊維の応力は端でほぼゼロです。端から離れるにつれ、界面のせん断応力 τ で少しずつ荷重が入り、応力は端からの距離にほぼ比例して増えます。繊維が十分長ければ、ある距離から先は繊維と母材のひずみがそろって応力が一定の最大値になります。この最大値が繊維の引張強さに達するのに必要な長さが臨界繊維長 lc で、端からの距離 lc/2 で強さに達します。繊維が lc よりずっと長ければ、応力の低い端の部分の割合が小さくなり、連続繊維に近い補強効果が得られます。界面のせん断応力が一定なのは繊維の応力が増える割合が一定ということで、応力そのものが一様になるわけではありません。端面から荷重が入って端で最大になるという説明は逆です。

一方向材の層を [0/90]ₛ のように直交させて対称に積み重ねた積層板の、面内の剛性についての説明として正しいものはどれか。

  1. A0°方向と90°方向のヤング率は等しく、45°方向でも両方の層が半分ずつ効くので面内で等方性になる
  2. B0°方向のヤング率だけが高く、90°方向は繊維が荷重を受けず、樹脂だけのヤング率になる
  3. C0°方向と90°方向のヤング率はほぼ等しいが、45°方向では面内せん断が効いて小さくなる
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正解:C. 0°方向と90°方向のヤング率はほぼ等しいが、45°方向では面内せん断が効いて小さくなる

[0/90]ₛ では、0°方向に引っ張ると0°層が、90°方向に引っ張ると90°層が繊維方向で荷重を受けるので、両方向のヤング率はほぼ等しくなります。しかし45°方向に引っ張ると、どの層の繊維も荷重の方向から45°ずれ、変形はおもに樹脂が支える面内せん断になるので、ヤング率は大きく下がります。面内で等方性に近づけたいときは、[0/±45/90]ₛ のように45°の層を加えた疑似等方積層にします。45°方向も同じという説明はこの点を見落としています。90°方向でも90°層の繊維が荷重を受けるので、樹脂だけのヤング率になるわけではありません。なお、どの積層でも厚さ方向は樹脂が支えるので、層間はく離が起こりやすい点は残ります。

よくある質問

垂直方向の E2 は、逆複合則と Halpin–Tsai のどちらを使えばよいですか?

逆複合則は下限なので、実際の E2 はそれより大きいのがふつうです。円い繊維の一方向材では Halpin–Tsai(ξ = 2)のほうが測定に近くなります。ただし炭素繊維やアラミドでは繊維の径方向の弾性率が小さいので、Ef2 に繊維方向の値ではなく径方向の値を入れることが大切です。

単層の E(θ) と、積層板の Ex はどう違いますか?

単層の E(θ) は、一方向材を繊維から θ の向きに引っ張ったときの弾性率で、θ が少し傾くだけで急に下がります。積層板の Ex は、向きの違う層をまとめた面内の弾性率で、ABD 行列の逆行列から求めます。疑似等方積層では、どの向きでも Ex が同じになります。

B 行列が 0 でない積層はいけないのですか?

B ≠ 0 だと、引っ張ると曲がり、硬化のあと冷えると反ります。形を保ちたい部品ではふつう対称積層にします。わざと連成を使う設計(曲げとねじりの連成を使う翼など)もありますが、その場合も反りの計算が要ります。

最初の層が壊れても、まだ荷重を持てるのはなぜですか?

最初に壊れるのは多くの場合、荷重に垂直な層の母材の割れで、繊維はまだ切れていません。割れた層の垂直方向とせん断の剛性が下がり、荷重はほかの層に移ります。0° の層の繊維が切れるところまでは荷重を持てるので、最後の層の破壊は最初の層の破壊よりかなり大きくなることがあります。ただし割れは、はく離や漏れ、疲労の始まりになるので、設計では最初の層の破壊を基準にすることも多いです。

Tsai–Wu の F12* はいくつにすればよいですか?

正確には2軸の試験から決めますが、試験が難しいので、Tsai と Hahn がすすめた F12* = −1/2(F12 = −½√(F11F22))がよく使われます。F12* は −1 と 1 のあいだに入る必要があり(破壊の面が閉じるため)、値によって2軸の荷重での強さの予測が変わります。

質量率と体積率は、どちらで入れればよいですか?

どちらでも入れられます。プリプレグの樹脂含有率や配合は質量率で示されることが多いので、そのときは質量率を選ぶと密度で体積率に換算します。式に入るのは体積率で、炭素繊維とエポキシでは体積率が質量率より 5–10 ポイントほど小さくなります。

Voigt と Reuss の式は、本当に上限と下限ですか?

下限のほうは厳密です。一様な応力は力のつり合いを満たすので、それで計算した補エネルギーは真の値以上になり(最小補エネルギーの原理)、等応力の式の弾性率は真の値以下になります(Paul 1960)。上限のほうは、繊維と母材のポアソン比が等しいときに限って VfEf + VmEm になります。ポアソン比が違うと、エネルギー原理の上限はこれより少し大きな式になり、繊維方向の E1 の真の値も複合則よりごくわずかに大きくなります(Hill 1964)。実用上は E1 = VfEf1 + VmEm で十分です。

関連する用語

複合則 CFRP(炭素繊維強化プラスチック) GFRP(ガラス繊維強化プラスチック) 比剛性 臨界繊維長 疑似等方積層 金属基複合材料 熱硬化性樹脂 ヤング率

関連する比較

公式集

複合則(繊維の向き) 逆複合則(繊維に直角) Halpin–Tsai の式 体積率と質量率 一方向材の引張強さ 臨界繊維長と短繊維の強さ(Kelly–Tyson) 一方向材の熱膨張(Schapery) 単層の向きを変えたときのヤング率 Tsai–Hill の破壊則

関連する計算ツール

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