破損解析ナビ

壊れた部品を前にしたら、まず破面と使われ方を観察しましょう。下の質問に答えると、破損の形態の候補が、どの手がかりが根拠になったかとともに並びます。わからない質問は「わからない」のままで構いません。答えはURLに残るので、そのまま共有できます。

このナビは、手がかりと破損の形態の対応を決めた点数表で候補を並べるだけで、原因を診断するものではありません。点は確率ではなく、選んだ手がかりの数で大きくなります。実際の破損解析では、破面・断面の組織・成分・硬さ・応力の解析を組み合わせ、複数の形態が重なっていないかも確かめます。

1破面・き裂の見た目 (いくつでも)

肉眼・ルーペ・実体顕微鏡で見えるものと、走査電子顕微鏡(SEM)や断面の観察でわかったものを、当てはまるだけ選びます。

2破断部の変形

破片を合わせたときのすき間や、くびれ・曲がり・伸びを見ます。

3かかっていた荷重

使われ方から、いちばん近いものを選びます。

4使っていた温度

壊れたときと、ふだん使っていたときの温度で考えます。

5まわりの環境 (いくつでも)

使っている間と、製造のとき(めっき・溶接など)に触れたものを、当てはまるだけ選びます。

6材料

壊れた部品の材料に近いものを選びます。

7壊れるまでの期間

使い始めて(または製造して)から壊れるまでの長さです。

破損の形態の候補

質問に答えると、破損の形態の候補が、根拠になった手がかりとともにここに並びます。

    答えはこのページのURLに残ります。リンクを送ると、同じ答えと候補を開けます。答えはサーバーに送られません。

    破損の形態の見分け方と対策

    このナビで扱う13の形態です。見分け方、確かめる試験、よくある取り違え、対策をまとめました。

    延性破壊(過負荷)材料の強さを超える荷重が一度にかかり、大きく変形してからちぎれた破壊です。材料の中に小さなボイド(空洞)が生まれ、育ってつながることで割れます。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 破断部にくびれや曲がりなどの大きな塑性変形があります。丸棒の引張では、縁が約45°に傾いたシアリップのある、カップアンドコーン形の破面になります。
    • 走査電子顕微鏡(SEM)で見ると、破面が一面に小さなくぼみ(ディンプル)で覆われています。引張では丸い等軸のディンプル、せん断では一方向に引き伸ばされたディンプルになります。

    確かめる試験

    • 破断した部品の寸法と硬さを測り、かかった荷重を部品の強さ(引張強さや0.2%耐力)と比べます。
    • 同じロットの材料で引張試験や硬さ試験を行い、材料が規格どおりの強さだったか(材料の取り違えや熱処理の不良がないか)を確かめます。
    • 応力の解析で、設計で想定していない荷重がかかったかを調べます。

    よくある取り違え

    • 疲労き裂が大きく進んだあとの最終破断部も、ディンプルのある延性的な破面になります。最後に割れた部分だけで過負荷と決めず、起点のまわりにビーチマークやストライエーションがないかを確かめます。

    対策

    材料
    必要な強さと延性をもつ材料と熱処理を選びます。
    設計
    想定される最大の荷重に対して余裕をもたせ、断面の急な変化などの応力集中を避けます。
    環境・使い方
    過大な荷重がかからないよう、使い方や保護の装置(過負荷を止める仕組み)を見直します。
    製造・保守
    材料の取り違えや熱処理の不良による強さの不足を、受入れと製造の検査で防ぎます。

    点数表で点が入る手がかり

    SEMでディンプル(小さなくぼみ)が一面に見える +3大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) +3衝撃や、急に大きな荷重がかかった +2使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で +2長い時間をかけて、ふくらんだり伸びたりしていた +1一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) +1一般の炭素鋼・低合金鋼 +1ほとんどない(破片がぴったり合う) −3外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力) −3セラミックス・ガラス −3ビーチマーク(貝殻のような縞が起点を中心に広がる) −2平らで光る小さな面(へき開)やリバーパターン −2SEMでストライエーション(細かい平行な縞)が見える −2結晶粒の形が見える粒界破面 −2割れより先に、肉が減っていた(減肉・すり減り) −2シェブロン(山形の模様)や放射状の模様が起点を指す −1割れではなく、表面に引っかき傷・すり減り・相手の材料の移着がある −1わずかにある −1くり返しの荷重(振動・回転・圧力や負荷の変動) −1低温(0℃付近より低い) −1高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) −1ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −1数年以上 −1

    関連する用語: 0.2%耐力 加工硬化

    1. 破断面を走査電子顕微鏡で観察したときの特徴と、破壊の種類の組み合わせとして正しいものはどれか。
    2. 鋼のような延性のある金属で、き裂が進むのに必要なエネルギー(臨界エネルギー解放率 G_c)は、表面エネルギーから見積もった 2γs(数J/m²程度)より桁違いに大きい。主な理由はどれか。
    3. アルミニウム合金のように明確な降伏点が現れない材料で用いる0.2%耐力の求め方として正しいものはどれか。
    脆性破壊ほとんど変形せずに、き裂が速く走って割れる破壊です。鋼では低温・切欠きやき裂・衝撃・靭性の低い組織が重なると起こりやすく、セラミックスやガラスはふつうこの形で壊れます。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 破面は平らで、荷重にほぼ垂直です。目立った変形がなく、破片を合わせるとよく合います。
    • 板や壁の破面では、シェブロン(山形の模様)や放射状の模様が現れ、その向きをたどると起点に行き着きます。
    • SEMでは、結晶の特定の面で割れたへき開の平らな小面と、川の流れのようなリバーパターンが見えます。不純物が粒界に偏析した焼戻し脆性などでは、粒界に沿って割れることもあります。
    • セラミックスやガラスでは、起点のまわりにミラー(鏡面)と呼ぶなめらかな部分ができ、その大きさから破壊したときの応力を見積もる方法があります(ASTM C1678)。

    確かめる試験

    • シャルピー衝撃試験で、使用温度での吸収エネルギーと、延性から脆性に変わる温度(延性脆性遷移温度)を調べます。
    • 破壊靭性 K_IC を測り、見つかったき裂の大きさと応力から K = Yσ√(πa) を求めて、破壊の条件に達していたかを確かめます。
    • 組織と化学成分を調べ、靭性を下げる要因(粗い結晶粒、粒界に偏析する不純物、溶接の熱影響部の硬化)を探します。

    よくある取り違え

    • 最後の破面が脆性でも、起点には疲労き裂や応力腐食割れでできた小さなき裂があり、それが臨界の大きさに達して割れただけのことがあります(シルバー橋の崩落)。起点を高い倍率で調べます。
    • フェライト系の鋼(体心立方)は低温で急にもろくなりますが、アルミニウム・銅・ニッケルの合金やオーステナイト系ステンレス鋼(面心立方)は、はっきりした遷移を示しません。

    対策

    材料
    使用温度で十分な靭性(シャルピー吸収エネルギー・破壊靭性)をもつ鋼を選び、結晶粒を細かくします。
    設計
    切欠きや断面の急な変化を避け、き裂があっても壊れる前に部材全体が降伏する設計(破壊前降伏)にします。
    環境・使い方
    延性脆性遷移温度より低い温度で、衝撃的な荷重をかけないようにします。
    製造・保守
    溶接の欠陥や硬化を検査し、靭性の低い熱影響部ができないよう溶接の条件を管理します。

    点数表で点が入る手がかり

    シェブロン(山形の模様)や放射状の模様が起点を指す +3平らで光る小さな面(へき開)やリバーパターン +3衝撃や、急に大きな荷重がかかった +3低温(0℃付近より低い) +3セラミックス・ガラス +3ほとんどない(破片がぴったり合う) +2一般の炭素鋼・低合金鋼 +2使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で +2結晶粒の形が見える粒界破面 +1高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) +1大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) −3オーステナイト系ステンレス鋼 −3アルミニウム合金 −3銅合金(黄銅など) −3SEMでディンプル(小さなくぼみ)が一面に見える −2SEMでストライエーション(細かい平行な縞)が見える −2割れより先に、肉が減っていた(減肉・すり減り) −2高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) −2耐熱合金(Ni基超合金など) −2ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −2ビーチマーク(貝殻のような縞が起点を中心に広がる) −1割れではなく、表面に引っかき傷・すり減り・相手の材料の移着がある −1外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力) −1中くらい(約60〜300℃。熱水・蒸気の配管など) −1樹脂(プラスチック) −1

    関連する用語: 破壊靭性 応力拡大係数 グリフィスの理論 破壊前降伏 溶接熱影響部

    1. 低温で延性から脆性への遷移(延性脆性遷移)がはっきり現れる材料はどれか。
    2. 破壊靭性 K_IC = 50 MPa·√m の鋼板に200 MPaの引張応力がかかっている。形状係数 Y = 1.0 として K = Yσ√(πa) を使うと、破壊が起こる限界のき裂長さaはどれに最も近いか。
    3. 同じ材料で厚さの異なる板の破壊靭性を測ったとき、板厚を増すと、見かけの破壊靭性 K_c はどうなるか。
    4. 完全な結晶の理論強度はヤング率の10分の1程度と見積もられるが、ガラスなどの脆い材料の実際の破壊強度は、その数十分の一から数百分の一にとどまることが多い。主な理由はどれか。

    事故の事例: シルバー橋の崩落(1967年):アイバーの小さなき裂からの脆性破壊

    疲労降伏応力より低い応力でも、くり返しかかることでき裂が生まれ、少しずつ進んで、最後に残りの断面が一気に割れる破壊です。機械の破損でいちばんよく見られる形の1つです。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 肉眼では、起点を中心にビーチマーク(貝殻のような縞)が広がります。運転の停止や荷重の変化の跡です。
    • 起点が複数あると、起点と起点の間にラチェットマーク(縁の段差)が並びます。
    • き裂が進んだ部分はなめらかでシアリップがなく、変色していることがあります。最後に割れた部分は粗い面になります。
    • SEMでは、ほぼ1サイクルごとのき裂の前進を表すストライエーションが見えます。アルミニウム合金でははっきり見え、高強度鋼では不明瞭なことがあります。
    • 起点は、表面の傷や切欠き、溶接の止端、介在物など、応力が集中する所にあることが多いです。

    確かめる試験

    • 実体顕微鏡で起点・ビーチマーク・最終破断部の位置と大きさを記録し、SEMでストライエーションを探します。
    • ストライエーションの間隔からき裂の進展速度と応力拡大係数の範囲 ΔK を見積もり、かかっていた応力の大きさを逆算します。
    • 起点の表面粗さ、硬さ、残留応力(X線回折)を測ります。
    • 荷重の測定や振動の解析で、くり返しの応力の大きさと回数を見積もります。

    よくある取り違え

    • ストライエーションが見えなくても、疲労でないとは限りません。進展が遅い領域では縞が見えにくく、破面どうしのこすれや腐食で消えることもあります。
    • 応力腐食割れは見た目が疲労に似ることがあります。荷重がくり返しだったか、特定の腐食の環境があったかと合わせて判断します。
    • 最後に割れた部分のディンプルやへき開だけを見て、過負荷や脆性破壊と判断しないようにします。

    対策

    材料
    介在物の少ない清浄な鋼など、疲労強度の高い材料を選びます。
    設計
    切欠きや断面の急な変化による応力集中を減らし、応力振幅と引張の平均応力を下げます(修正グッドマン線図で評価)。
    環境・使い方
    腐食があると疲労強度が下がるので、防食します。
    製造・保守
    ショットピーニング・浸炭・窒化などで表面に圧縮の残留応力を入れ、表面の傷を減らし、溶接の止端の形を整えます。

    点数表で点が入る手がかり

    ビーチマーク(貝殻のような縞が起点を中心に広がる) +3SEMでストライエーション(細かい平行な縞)が見える +3くり返しの荷重(振動・回転・圧力や負荷の変動) +3ラチェットマーク(破面の縁に段差が並ぶ。起点が複数) +2ほとんどない(破片がぴったり合う) +2わずかにある +1加熱と冷却のくり返し(起動・停止、急冷) +1高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) +1一般の炭素鋼・低合金鋼 +1アルミニウム合金 +1数時間〜数か月 +1数年以上 +1一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) −3割れより先に、肉が減っていた(減肉・すり減り) −2衝撃や、急に大きな荷重がかかった −2外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力) −2結晶粒の形が見える粒界破面 −1断面で、細いき裂が枝分かれしながら進んでいる −1大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) −1セラミックス・ガラス −1使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で −1

    関連する用語: 疲労限度 ストライエーション パリス則 マイナー則 修正グッドマン線図 応力集中係数

    1. 疲労で破断した部品の破面に、肉眼で見える貝殻状の模様(ビーチマーク)と、電子顕微鏡で見える細かい縞(ストライエーション)があった。これらの説明として正しいものはどれか。
    2. 表面が滑らかな金属材料に、降伏応力より低い応力振幅を繰り返しかけたときの疲労き裂の発生についての説明として正しいものはどれか。
    3. 鋼の部品の疲労強度を高める表面の処理として、効果が期待できるものはどれか。
    4. 疲労き裂の進展速度 da/dN を、応力拡大係数の範囲 ΔK に対して両対数で描いた曲線についての説明として正しいものはどれか。
    5. 疲労のS-N曲線についての説明として正しいものはどれか。

    事故の事例: アロハ航空243便の事故(1988年):胴体の重ね継手の疲労と腐食

    腐食疲労くり返しの応力と腐食の環境が重なって、空気中より低い応力・少ない回数で疲労き裂が生まれて進む破壊です。応力腐食割れと違い、特定の材料と環境の組み合わせでなくても起こります。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 疲労と同じくビーチマークやラチェットマークが現れ、起点に孔食や腐食生成物が見られます。
    • 孔食から多数の小さなき裂が生まれ、それらがつながって大きなき裂になることがあります。
    • 破面が腐食生成物で覆われてストライエーションが消えていたり、平らな面に縞が並ぶ脆性ストライエーションが見えたりします。

    確かめる試験

    • 起点と破面の腐食生成物をEDSなどで分析し、塩化物など環境の成分が含まれるかを調べます。
    • 実際の環境の中で疲労試験を行います。海水中などでは、くり返しの周波数が低いほど寿命が大きく短くなることがあるので、実際に近い周波数で試験します。

    よくある取り違え

    • 腐食の環境では疲労限度が現れなくなるので、空気中の疲労限度より低い応力で設計した部品でも壊れることがあります。
    • 応力腐食割れは一定の荷重でも進みますが、腐食疲労はくり返しの荷重がないと進みません。荷重の種類で区別します。

    対策

    材料
    その環境で耐食性の高い材料を選ぶか、防食の被覆をした材料を使います。
    設計
    水がたまるすき間や液のたまりを作らず、応力振幅を下げます。
    環境・使い方
    塗装・めっき・電気防食・水質の管理で腐食を抑えます。
    製造・保守
    ショットピーニングで表面に圧縮の残留応力を入れ、被覆の傷を検査で防ぎます。

    点数表で点が入る手がかり

    くり返しの荷重(振動・回転・圧力や負荷の変動) +3ビーチマーク(貝殻のような縞が起点を中心に広がる) +2ラチェットマーク(破面の縁に段差が並ぶ。起点が複数) +2SEMでストライエーション(細かい平行な縞)が見える +2起点に孔食や腐食生成物がある +2水・湿気・結露 +2塩化物(海水・塩分・凍結防止剤) +2数年以上 +2くり返しの荷重 × 塩化物 +2表面に多数のき裂が網目状に並び、酸化物で埋まっている +1わずかにある +1ほとんどない(破片がぴったり合う) +1一般の炭素鋼・低合金鋼 +1アルミニウム合金 +1くり返しの荷重 × 水・湿気 +1一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) −3樹脂(プラスチック) −3ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −3乾いた空気 −2セラミックス・ガラス −2使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で −2

    関連する用語: 疲労限度 孔食 ストライエーション

    1. SUS304を、塩化物イオンを多く含む海水中で使ったときに起こりやすい局部腐食と、その対策の組み合わせとして正しいものはどれか。
    2. 疲労のS-N曲線についての説明として正しいものはどれか。
    3. 疲労で破断した部品の破面に、肉眼で見える貝殻状の模様(ビーチマーク)と、電子顕微鏡で見える細かい縞(ストライエーション)があった。これらの説明として正しいものはどれか。

    事故の事例: アロハ航空243便の事故(1988年):胴体の重ね継手の疲労と腐食

    応力腐食割れ感受性のある材料に引張応力(残留応力でもよい)がかかり、特定の腐食の環境にさらされたとき、降伏応力より低い応力でき裂が進む割れです。材料・応力・環境の3つがそろったときに起こります。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 細いき裂が枝分かれしながら進みます。外から見ると腐食はほとんどなく、表面に出ているき裂も小さいので見つけにくい損傷です。
    • 塩化物によるオーステナイト系ステンレス鋼の割れは粒の中を進む粒内割れ、アンモニアによる黄銅の時期割れや、鋭敏化したステンレス鋼の割れは粒界割れになることが多く、割れの形が手がかりになります。
    • 破断部に大きな変形はなく、き裂の中や破面が腐食生成物で変色していることがあります。

    確かめる試験

    • 断面を研磨・エッチングして光学顕微鏡で観察し、き裂の枝分かれと、粒内か粒界かを調べます。
    • Uベンド試験・定荷重試験・低ひずみ速度試験(SSRT)で、その環境での割れやすさを確かめます。オーステナイト系ステンレス鋼では、沸騰した42%塩化マグネシウムの中での試験がよく使われます。
    • 溶接や曲げ加工による引張の残留応力をX線回折で測ります。

    よくある取り違え

    • 疲労と見た目が似ることがあります。荷重がくり返しだったか、特定の環境があったかで見分けます。
    • 粒界破面は、水素ぜい化・液体金属ぜい化・クリープでも似た見た目になります。
    • 腐食で生じた水素で進む割れでは、電気防食がかえって割れを促すことがあり、金属が溶けて進む型とは対策が逆になります。

    対策

    材料
    Niの多い鋼種や二相ステンレス鋼に替える、アルミニウム合金7075を過時効させたT73のように割れに強い熱処理にする、などの方法があります。
    設計
    引張の残留応力や応力集中を減らし、塩化物が濃縮するすき間や液のたまりを作らないようにします。
    環境・使い方
    塩化物や溶存酸素を減らし、温度を下げ、インヒビター(腐食抑制剤)を使います。オーステナイト系ステンレス鋼の塩化物による割れは、およそ60℃以上で起こりやすいとされます。
    製造・保守
    応力除去焼なましやショットピーニングで引張の残留応力を減らします。応力除去焼なましは炭素鋼で広く使われますが、オーステナイト系ステンレス鋼では効果が出にくいことがあります。

    点数表で点が入る手がかり

    断面で、細いき裂が枝分かれしながら進んでいる +3外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力) +3濃いアルカリやアンモニア +3塩化物 × オーステナイト系ステンレス鋼 +3アンモニア・アルカリ × 銅合金(時期割れ) +3結晶粒の形が見える粒界破面 +2ほとんどない(破片がぴったり合う) +2一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) +2中くらい(約60〜300℃。熱水・蒸気の配管など) +2塩化物(海水・塩分・凍結防止剤) +2オーステナイト系ステンレス鋼 +2銅合金(黄銅など) +2濃いアルカリ × 炭素鋼(アルカリぜい化) +2起点に孔食や腐食生成物がある +1水・湿気・結露 +1水素の入り口(酸洗い・電気めっき・溶接・電気防食・水素ガス) +1高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) +1アルミニウム合金 +1数時間〜数か月 +1数年以上 +1樹脂(プラスチック) −3ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −3大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) −2乾いた空気 −2SEMでディンプル(小さなくぼみ)が一面に見える −1くり返しの荷重(振動・回転・圧力や負荷の変動) −1衝撃や、急に大きな荷重がかかった −1低温(0℃付近より低い) −1高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) −1セラミックス・ガラス −1使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で −1

    関連する用語: 応力腐食割れ 鋭敏化 孔食 ステンレス鋼 黄銅 不動態

    1. 応力腐食割れについての説明として正しいものはどれか。
    2. SUS304を、塩化物イオンを多く含む海水中で使ったときに起こりやすい局部腐食と、その対策の組み合わせとして正しいものはどれか。
    3. SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼を溶接すると、溶接線から少し離れた熱影響部で粒界腐食が起こることがある(ウェルドディケイ)。その原因と対策の組み合わせとして正しいものはどれか。
    4. ステンレス鋼が大気や水の中でさびにくい主な理由はどれか。

    事故の事例: シルバー橋の崩落(1967年):アイバーの小さなき裂からの脆性破壊

    水素ぜい化鋼などに入った水素が、引張応力の高い所に集まって材料をもろくし、荷重をかけてからしばらくたって割れる現象です(遅れ破壊)。強さの高い鋼ほど起こりやすくなります。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 破断部に変形がほとんどなく、高強度鋼では粒界に沿った破面になることが多いです。
    • 一定の荷重やボルトの締付けのもとで、時間がたってから突然割れます。
    • 溶接では、溶接後しばらくしてから熱影響部などに低温割れ(水素割れ)が出ることがあります。

    確かめる試験

    • 硬さや強さを測ります。鋼の降伏強さが約600 MPaより低ければ起こりにくく、約1000 MPaを超えると大きな問題になりやすいとされます。
    • 製造の履歴(酸洗い・電気めっき・溶接)と、使用中の水素の入り口(腐食・電気防食)を調べます。
    • 一定の荷重をかけ続ける試験や低ひずみ速度試験で、水素を入れた試験片と入れない試験片を比べます。

    よくある取り違え

    • 応力腐食割れと重なる部分がありますが、水素ぜい化は腐食の環境がなくても、めっきや溶接で入った水素で起こります。
    • 溶融亜鉛めっきのあとの割れでは、液体金属ぜい化と水素の両方が疑われるので、両方を調べます。

    対策

    材料
    必要以上に強さ(硬さ)を上げないようにします。オーステナイト系の鋼は水素の拡散が遅く、ぜい化するまでにずっと長い時間がかかります。
    設計
    高強度ボルトの締付けの力や応力集中を見直し、持続する引張応力を下げます。
    環境・使い方
    電気防食の電位を管理し、防食しすぎて水素を発生させないようにします。
    製造・保守
    酸洗いや電気めっきのあと、約200℃で数時間のベーキングで水素を抜きます。溶接では予熱・後熱で冷却を遅くし、水素を逃がします。

    点数表で点が入る手がかり

    水素の入り口(酸洗い・電気めっき・溶接・電気防食・水素ガス) +3高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) +3水素の入り口 × 高強度鋼 +3結晶粒の形が見える粒界破面 +2ほとんどない(破片がぴったり合う) +2一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) +2外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力) +2数時間〜数か月 +2平らで光る小さな面(へき開)やリバーパターン +1断面で、細いき裂が枝分かれしながら進んでいる +1室温付近 +1水・湿気・結露 +1使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で +1樹脂(プラスチック) −3ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −3セラミックス・ガラス −3大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) −2SEMでディンプル(小さなくぼみ)が一面に見える −1くり返しの荷重(振動・回転・圧力や負荷の変動) −1オーステナイト系ステンレス鋼 −1

    関連する用語: 溶接熱影響部 炭素当量 応力腐食割れ

    1. 高張力鋼の溶接で、溶接後の数分〜数日のうちに熱影響部などに生じる低温割れ(水素割れ)を防ぐために予熱を行う。予熱の効果として正しいものはどれか。
    2. 鋼の溶接性の目安となる炭素当量を Ceq = C + Mn/6 + (Cr + Mo + V)/5 + (Ni + Cu)/15 (質量%)で求める。C 0.20%、Mn 1.20%、Cr 0.30%、Mo 0.10%、V 0%、Ni 0.30%、Cu 0.15%の鋼の Ceq はどれに最も近いか。
    3. 応力腐食割れについての説明として正しいものはどれか。
    クリープ破断高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上)で一定の荷重が長い時間かかり、変形が時間とともに進んで、粒界のボイドや割れがつながって破断する壊れ方です。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 破断部の近くの断面に、粒界のボイド(キャビティ)や、結晶粒の三重点から生えるくさび形の割れが多数あります。
    • 粒界はクリープの変形と損傷が最も速く進む場所で、き裂は粒界に沿って進むことが多いです。
    • クリープは時間とともに変形が進む現象なので、破断の前に、管のふくらみや部材の伸びとして変形が現れることがあります。

    確かめる試験

    • 使用温度と応力でのクリープ破断試験を行い、ラーソン・ミラー・パラメータで温度と時間を換算して寿命を見積もります。
    • 運転の記録から実際の金属の温度(過熱がなかったか)を調べ、析出物の粗大化などの組織の変化からも温度の履歴を推定します。

    よくある取り違え

    • 粒界の破面だけでは、水素ぜい化や応力腐食割れと区別しにくいので、温度と時間を最も重要な手がかりにします。
    • 温度が上下する使われ方では、熱疲労やクリープと疲労の重なり(熱機械疲労)を考えます。
    • 樹脂は融点が低いので、室温でも長い時間の荷重でクリープして伸び、割れることがあります。このナビは金属の高温のクリープを主に扱いますが、樹脂で長い時間をかけた伸びがあればクリープを疑います。

    対策

    材料
    Ni基超合金など高温強度の高い材料を選びます。粒界がクリープの弱点になるので、一方向凝固の柱状晶や単結晶で、応力に垂直な粒界をなくす方法があります。
    設計
    使用温度と応力を下げ、ラーソン・ミラー・パラメータなどで余裕のある寿命を見込みます。
    環境・使い方
    過熱を防ぎ、遮熱コーティングなどで金属の温度を下げます。
    製造・保守
    溶体化と時効の熱処理を正しく行い、狙いの析出組織にします。

    点数表で点が入る手がかり

    破断部の近くの断面で、粒界にボイドやくさび形の割れが多い +3長い時間をかけて、ふくらんだり伸びたりしていた +3高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) +3耐熱合金(Ni基超合金など) +3樹脂 × 長い時間をかけた伸び(樹脂は室温でもクリープする) +3結晶粒の形が見える粒界破面 +2一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) +2数年以上 +2わずかにある +1加熱と冷却のくり返し(起動・停止、急冷) +1高温のガス(燃焼ガス・高温の空気) +1低温(0℃付近より低い) −3衝撃や、急に大きな荷重がかかった −2室温付近 −2使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で −2くり返しの荷重(振動・回転・圧力や負荷の変動) −1中くらい(約60〜300℃。熱水・蒸気の配管など) −1ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −1

    関連する用語: クリープ べき乗則クリープ 拡散クリープ ラーソン・ミラー・パラメータ Ni基超合金 変形機構図

    1. 一定の荷重と温度のもとで測ったクリープ曲線(ひずみと時間の関係)の3つの段階についての説明として正しいものはどれか。
    2. 室温では結晶粒を細かくすると強度が上がる(ホール・ペッチの関係)が、高温で長時間荷重を受ける部品では、粗い結晶粒や単結晶が使われることが多い。その理由として正しいものはどれか。
    3. ある耐熱合金は、ある応力のもとで1000 Kで1000 hでクリープ破断した。ラーソン・ミラー・パラメータ P = T(C + log₁₀t_r)(Tは絶対温度、t_rは破断時間で単位はh、C = 20)が同じ応力では一定とすると、同じ応力で10⁵ hの破断寿命を得るための温度はどれに最も近いか。
    4. ジェットエンジンのタービン翼に、一方向凝固による柱状晶や単結晶のNi基超合金が使われる理由として正しいものはどれか。
    5. クリープが無視できなくなる温度の目安を、融点(絶対温度)の約0.4倍とする。アルミニウム(融点660℃)では、この目安はどれに最も近いか。
    熱疲労加熱と冷却がくり返され、拘束されて自由に伸び縮みできない部分に熱応力がくり返し生じて、表面から多数のき裂が生まれて進む疲労です。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 急に冷やされる面に多数のき裂ができ、網目状(亀甲状)に見えます。
    • き裂は幅が広く、表面から始まり、高温での酸化物で埋まっていることが多いです。くさびのような形で粒の中を進みます。
    • 溶接の止端や、断面の厚さが変わる所に沿ってき裂が出ることが多いです。

    確かめる試験

    • 運転の記録から起動・停止の回数と、温度の変化の速さを調べ、熱膨張の差と温度差から熱応力を見積もります。
    • き裂は表面につながっていることが多いので、磁粉探傷や浸透探傷で探します。

    よくある取り違え

    • 多数の浅いき裂は、腐食による割れと間違えやすいものです。き裂が急に冷やされる面に集まっているか、熱応力の向きに垂直かを確かめます。

    対策

    材料
    組み合わせる材料どうしの熱膨張の差を小さくし、熱膨張が小さく熱が伝わりやすい材料を選びます。
    設計
    伸び縮みを逃がす柔軟な支持にし、溶接部や断面の変化をなめらかにします。
    環境・使い方
    起動・停止の加熱と冷却の速さを管理し、高温の部分に冷たい水がかからないようにします。
    製造・保守
    溶接の止端をなめらかに仕上げ、応力集中を減らします。

    点数表で点が入る手がかり

    表面に多数のき裂が網目状に並び、酸化物で埋まっている +3加熱と冷却のくり返し(起動・停止、急冷) +3高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) +2耐熱合金(Ni基超合金など) +2ビーチマーク(貝殻のような縞が起点を中心に広がる) +1ラチェットマーク(破面の縁に段差が並ぶ。起点が複数) +1SEMでストライエーション(細かい平行な縞)が見える +1ほとんどない(破片がぴったり合う) +1高温のガス(燃焼ガス・高温の空気) +1数年以上 +1樹脂(プラスチック) −2ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −2一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) −1低温(0℃付近より低い) −1

    関連する用語: 熱応力 線膨張係数 遮熱コーティング

    1. シリコン基板(線膨張係数2.6×10⁻⁶ K⁻¹)上のアルミニウム膜(ヤング率70 GPa、ポアソン比0.35、線膨張係数23×10⁻⁶ K⁻¹)を、応力のない125℃から25℃まで冷却した。基板は十分に厚いとして、膜に生じる熱応力 σ = EΔαΔT/(1 − ν) の向きと大きさはどれか。
    2. 固体が加熱によって膨張する(熱膨張が起こる)主な原因はどれか。
    液体金属ぜい化溶けた金属(亜鉛・銅・すず・水銀・ガリウムなど)にぬれた固体の金属が、引張応力のもとで延性や破壊の応力を大きく失い、粒界に沿って割れる現象です。溶融亜鉛めっきの割れの原因としてよく知られています。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 溶けた金属に触れたときに、ほとんど変形せずに割れます。溶融亜鉛めっきした鋼では、亜鉛の層の下に粒界に沿った割れができます。
    • 破面の粒界が、亜鉛など割れを起こした金属で覆われています。
    • よく知られた組み合わせは、アルミニウムとガリウム・水銀、鋼と亜鉛・銅・すず、銅合金と水銀などです。

    確かめる試験

    • 破面と割れの中をSEMとEDS・EPMAで分析し、割れを起こした金属があるかを調べます。
    • 断面で、割れが粒界に沿っているか、金属がどこまで入り込んでいるかを見ます。
    • めっきや溶接の条件、加工の条件、残留応力、鋼の化学成分を調べます。

    よくある取り違え

    • 粒界破面になるので、応力腐食割れや水素ぜい化と取り違えやすいものです。溶けた金属に触れた履歴を確かめます。
    • めっきのあとの割れは、鋼に取り込まれた水素によることもあるので、両方を調べます。

    対策

    材料
    粒界に偏析して割れを促す成分(銅・すずなど)に注意して鋼を選びます。
    設計
    冷間曲げや溶接による引張の残留応力が集中しない形にします。
    環境・使い方
    使用中に、はんだや水銀などの溶けた金属に触れさせないようにします。
    製造・保守
    めっきの前の加工・溶接の条件と、めっきの作業の条件を管理します。

    点数表で点が入る手がかり

    破面や粒界に、亜鉛・はんだなど別の金属が付いている +3溶けた金属(溶融亜鉛めっき・はんだ・ろう・水銀) +3結晶粒の形が見える粒界破面 +2ほとんどない(破片がぴったり合う) +2外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力) +2使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で +2一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) +1高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) +1高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) +1アルミニウム合金 +1銅合金(黄銅など) +1溶けた金属 × 製造中・使い始め +1樹脂(プラスチック) −3ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −3セラミックス・ガラス −3大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) −2数年以上 −2

    関連する用語: SEM(走査電子顕微鏡) EDS(エネルギー分散型X線分光法)

    1. SEMやEPMAで特性X線を分析するEDS(エネルギー分散型)とWDS(波長分散型)の比較として正しいものはどれか。
    2. SEMの二次電子像と反射電子像の特徴として正しいものはどれか。
    摩耗接触してすべる・転がる・こすれる面から、材料が少しずつ失われる損傷です。凝着摩耗、アブレシブ摩耗、フレッティング、転がり疲れなどがあります。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 硬い粒子や突起が削った場合(アブレシブ摩耗)は、すべりの向きに引っかき傷が並びます。
    • 金属どうしがくっついてせん断された場合(凝着摩耗)は、相手の材料が移着したり、表面がむしれたりします。
    • 部品は割れずに寸法が減っていきます。

    確かめる試験

    • 摩耗した面を観察して傷の向きと摩耗粉の形・成分を調べ、表面の硬さを、相手の面や混入した粒子の硬さと比べます。
    • ピン・オン・ディスク試験などで摩耗量を測り、アーチャードの式 V = KWL/H で材料や条件を比べます。

    よくある取り違え

    • 摩耗で薄くなった部分が最後に割れることもあるので、割れた部分だけでなく、その前に寸法が減っていなかったかを確かめます。
    • 流れの中で配管の肉が減る損傷(エロージョン・コロージョン)は、接触する相手がいない別の機構で、対策も違います。

    対策

    材料
    表面を相手の粒子と同じ程度以上に硬くします(浸炭・窒化・硬質膜など)。
    設計
    面圧とすべり速度を下げます。
    環境・使い方
    潤滑を流体潤滑に近づけ(ストライベック曲線)、砂などの異物が入らないようにします。
    製造・保守
    表面粗さと仕上げを管理し、油膜の厚さに対して突起が当たりにくくします。

    点数表で点が入る手がかり

    割れではなく、表面に引っかき傷・すり減り・相手の材料の移着がある +3割れより先に、肉が減っていた(減肉・すり減り) +3相手の面とのすべり・こすれ・転がり +3内面がうろこ状・オレンジの皮のようにえぐれて薄くなっている +1速い流れ・液滴・粒子を含む流れ +1ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) +1セラミックス・ガラス +1数年以上 +1使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で −1

    関連する用語: アーチャードの摩耗式 凝着摩耗 アブレシブ摩耗 ストライベック曲線 浸炭 窒化処理

    1. 次の摩耗のしくみの説明のうち、凝着摩耗にあたるものはどれか。
    2. 石英の砂粒(硬さ約1000 HV)を含む土砂でこすられる建設機械の部品で、アブレシブ摩耗を減らす材料の選び方として正しいものはどれか。
    3. ピン・オン・ディスク試験で、硬さ H = 2.0 GPa のピンに垂直荷重50 Nをかけて、すべり距離1.0 kmだけすべらせた。アーチャードの摩耗式 V = KWL/H で無次元の摩耗係数を K = 1.0×10⁻⁴ とするとき、ピンの摩耗体積と、荷重を2倍にしたときの摩耗体積の変化の組み合わせとして正しいものはどれか。
    4. すべり軸受の摩擦係数を、潤滑油の粘度η、回転速度N、面圧Pからなる軸受特性数 ηN/P に対して描いたストライベック曲線についての説明として正しいものはどれか。
    流れによる減肉(エロージョン・コロージョン)速い水や蒸気の流れの中で、炭素鋼の表面の保護的な酸化皮膜が溶け出して流れに運ばれ、肉厚が少しずつ減る損傷です。原子力の分野では流れ加速型腐食(FAC)とも呼びます。最後は内圧に耐えられなくなって破裂します。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 配管の内面が、うろこ状やオレンジの皮のようにえぐれて、局所的に薄くなります。
    • オリフィス・エルボ・T継手の下流など、流れが乱れる所で薄くなります。
    • 破口のまわりは非常に薄く、薄くなった部分が内圧で裂けて開きます。

    確かめる試験

    • 超音波の厚さ計で肉厚を測り、前回の値との差から減肉の速さと余寿命を見積もります。
    • 鋼のCrの量を分析します(わずかなCrでも減肉が遅くなります)。
    • 水質(pH・溶存酸素)と、温度・流れの記録を調べます。単相の水の流れでは、約140〜160℃で減肉が最も速くなるとされます。

    よくある取り違え

    • 減肉は局所的で、全面腐食のように平均の腐食速度からは予測できません。
    • 蒸気の中の液滴が当たる液滴衝撃エロージョンも減肉を起こしますが、起こる場所と対策が違います。

    対策

    材料
    Crを含む低合金鋼(1.25%Cr以上のCr-Mo鋼)やステンレス鋼に替えます。
    設計
    流れを乱す複雑な形を減らします。
    環境・使い方
    pHを弱アルカリに保ち、溶存酸素を管理します。
    製造・保守
    点検する箇所を漏れなく登録し、流れの乱れる所を優先して肉厚を測ります。

    点数表で点が入る手がかり

    内面がうろこ状・オレンジの皮のようにえぐれて薄くなっている +3割れより先に、肉が減っていた(減肉・すり減り) +3速い流れ・液滴・粒子を含む流れ +3速い流れ × 炭素鋼 +3中くらい(約60〜300℃。熱水・蒸気の配管など) +2数年以上 +2割れではなく、表面に引っかき傷・すり減り・相手の材料の移着がある +1水・湿気・結露 +1一般の炭素鋼・低合金鋼 +1オーステナイト系ステンレス鋼 −3樹脂(プラスチック) −3ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) −3セラミックス・ガラス −3使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で −3乾いた空気 −2高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) −1アルミニウム合金 −1銅合金(黄銅など) −1耐熱合金(Ni基超合金など) −1

    関連する用語: 不動態 ファラデーの法則

    1. 鉄の腐食の電流密度が、全面で一様に1.0 µA/cm²であるとき、腐食で表面が後退する速さはどれに最も近いか。鉄は Fe²⁺ として溶けるとし、モル質量55.85 g/mol、密度7.87 g/cm³、ファラデー定数96485 C/mol、1年を3.15×10⁷ s とする。
    2. ステンレス鋼が大気や水の中でさびにくい主な理由はどれか。

    事故の事例: 美浜発電所3号機の配管破損(2004年):オリフィスの下流の減肉

    高分子の低温での弾性低下・ぜい化高分子は温度が下がってガラス転移温度に近づき、それを下回ると、分子の運動が凍結してゴムのような柔らかさを失います。ゴムのシールでは、押しつぶされたあと元の形に戻るのが遅くなってすき間をふさげなくなり、樹脂ではもろく割れやすくなります。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • ゴムのシールでは、割れがなくても、すき間からの漏れの跡や、熱による損傷(焼け・侵食)が残ることがあります。
    • 樹脂の部品では、ガラス転移温度より低い温度で分子が動きにくくなり、ほとんど変形せずに割れることがあります(例えばポリプロピレンのガラス転移温度は約−20〜0℃です)。

    確かめる試験

    • 使う温度で、ゴムが圧縮から元の形に戻る速さ(弾性の回復)を測ります。
    • ガラス転移温度を測り、使う最も低い温度と比べます。
    • 最も低い温度を含めた使用範囲で、実物にできるだけ近い状態の試験をします。

    よくある取り違え

    • シールの不具合では割れや破面がないので、材料の問題と気づきにくいことがあります。
    • 高分子の性質は時間と温度に依存し、温度を下げることは、より短い時間(速い変形)で測ることと同じ効果をもちます。速い動きへの追従は、低温でさらに難しくなります。

    対策

    材料
    使う最低温度より十分低いガラス転移温度をもつ材料を選びます。
    設計
    温度や寸法のばらつきに鈍感な設計にし、すき間が動いてもシールが追従できるようにします。
    環境・使い方
    ヒーターなどで温度を保つか、使用(打ち上げ・運転)の温度の制限を設けます。
    製造・保守
    低温を含む全使用範囲で、実際の使われ方に近い試験をして認定します。

    点数表で点が入る手がかり

    低温(0℃付近より低い) +3ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) +3樹脂(プラスチック) +2ゴム・エラストマー × 低温 +2樹脂 × 低温 +2樹脂に細かい筋(クレーズ)や白化がある +1ほとんどない(破片がぴったり合う) +1高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) −3高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) −3一般の炭素鋼・低合金鋼 −3オーステナイト系ステンレス鋼 −3アルミニウム合金 −3銅合金(黄銅など) −3耐熱合金(Ni基超合金など) −3セラミックス・ガラス −3中くらい(約60〜300℃。熱水・蒸気の配管など) −2大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) −1室温付近 −1

    関連する用語: ガラス転移温度 粘弾性

    1. 結晶性高分子(半結晶性高分子)のガラス転移温度Tgと融点Tmについての説明として正しいものはどれか。
    2. ポリ塩化ビニル(PVC)に可塑剤を加えると、ガラス転移温度Tgと材料の性質はどうなるか。
    3. 高分子の粘弾性における時間-温度換算則(時間-温度重ね合わせの原理)の考え方として正しいものはどれか。

    事故の事例: チャレンジャー号の事故(1986年):低温でOリングの弾性の回復が遅れた

    樹脂の環境応力割れ樹脂に引張応力(残留応力でもよい)がかかった状態で、油・溶剤・洗剤(界面活性剤)などの液体に触れると、ふだんよりずっと低い応力でクレーズやき裂が生まれて割れる現象です。金属の応力腐食割れに似ていて、ポリカーボネートなどの非晶性(ガラス状)の樹脂で問題になりやすいものです。

    見分け方(破面・断面の組織・SEM)

    • 曲げ・締付け・圧入などで応力の高い所から、細かいクレーズやき裂が何本も生まれ、そのうちの1本が割れにつながります。
    • 割れの近くが白っぽくなる(白化)ことがあります。
    • 変形が少なく、脆性的に割れます。

    確かめる試験

    • 試験片を曲げて固定し、液を付けて、き裂やクレーズが出るまでの時間やひずみを調べます(ポリエチレンでは ASTM D1693 などの規格があります)。
    • 部品に付いた液や洗剤、潤滑剤の成分を調べ、使われた環境を確かめます。

    よくある取り違え

    • 樹脂がふくらんだり溶けたりしていなくても起こるので、液が安全そうに見えても疑います。
    • 害のない濃さの液でも、蒸発などで濃くなると割れを起こすことがあります。

    対策

    材料
    触れる液に対して割れにくい樹脂を選びます。
    設計
    締付けや圧入、曲げによる引張の応力を下げます。
    環境・使い方
    割れを起こす液(溶剤・界面活性剤など)に触れさせないようにします。
    製造・保守
    成形の残留応力を減らします。

    点数表で点が入る手がかり

    樹脂に細かい筋(クレーズ)や白化がある +3油・溶剤・洗剤(界面活性剤) +3樹脂(プラスチック) +3一定の荷重(自重・内圧・締付けなど) +2外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力) +2樹脂 × 油・溶剤・洗剤 +2ほとんどない(破片がぴったり合う) +1室温付近 +1ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど) +1数時間〜数か月 +1高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど) −3一般の炭素鋼・低合金鋼 −3オーステナイト系ステンレス鋼 −3アルミニウム合金 −3銅合金(黄銅など) −3耐熱合金(Ni基超合金など) −3セラミックス・ガラス −3大きい(くびれ・曲がり・伸びがある) −2高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上) −1

    関連する用語: 結晶化度 粘弾性

    1. 同じ種類の高分子で結晶化度が高くなると、一般にどうなるか。

    事故の事例から学ぶ

    材料の破損が原因になった、よく知られた事故です。事実は公式の調査報告書などで確かめた値だけを書いています。

    判定の表(点数表)

    候補の順位は、この表の点を足して決めています。+は当てはまる手がかり、−は合わない手がかりです。

    点数表を開く
    手がかり延性脆性疲労腐食疲労応力腐食水素クリープ熱疲労液体金属摩耗減肉低温高分子環境応力割れ
    破面・き裂の見た目
    ビーチマーク(貝殻のような縞が起点を中心に広がる)−2−1+3+2+1
    ラチェットマーク(破面の縁に段差が並ぶ。起点が複数)+2+2+1
    シェブロン(山形の模様)や放射状の模様が起点を指す−1+3
    SEMでディンプル(小さなくぼみ)が一面に見える+3−2−1−1
    平らで光る小さな面(へき開)やリバーパターン−2+3+1
    SEMでストライエーション(細かい平行な縞)が見える−2−2+3+2+1
    結晶粒の形が見える粒界破面−2+1−1+2+2+2+2
    断面で、細いき裂が枝分かれしながら進んでいる−1+3+1
    表面に多数のき裂が網目状に並び、酸化物で埋まっている+1+3
    破断部の近くの断面で、粒界にボイドやくさび形の割れが多い+3
    起点に孔食や腐食生成物がある+2+1
    割れではなく、表面に引っかき傷・すり減り・相手の材料の移着がある−1−1+3+1
    内面がうろこ状・オレンジの皮のようにえぐれて薄くなっている+1+3
    樹脂に細かい筋(クレーズ)や白化がある+1+3
    破面や粒界に、亜鉛・はんだなど別の金属が付いている+3
    破断部の変形
    大きい(くびれ・曲がり・伸びがある)+3−3−1−2−2−2−1−2
    わずかにある−1+1+1+1
    ほとんどない(破片がぴったり合う)−3+2+2+1+2+2+1+2+1+1
    長い時間をかけて、ふくらんだり伸びたりしていた+1+3
    割れより先に、肉が減っていた(減肉・すり減り)−2−2−2+3+3
    かかっていた荷重
    一定の荷重(自重・内圧・締付けなど)+1−3−3+2+2+2−1+1+2
    くり返しの荷重(振動・回転・圧力や負荷の変動)−1+3+3−1−1−1
    衝撃や、急に大きな荷重がかかった+2+3−2−1−2
    加熱と冷却のくり返し(起動・停止、急冷)+1+1+3
    外からの荷重はほとんどない(溶接・曲げ加工・圧入の残留応力)−3−1−2+3+2+2+2
    相手の面とのすべり・こすれ・転がり+3
    使っていた温度
    低温(0℃付近より低い)−1+3−1−3−1+3
    室温付近+1−2−1+1
    中くらい(約60〜300℃。熱水・蒸気の配管など)−1+2−1+2−2
    高温(融点の絶対温度の約0.4倍以上。鋼ではおよそ450℃以上)−2−1+3+2+1−1−3−1
    まわりの環境
    乾いた空気−2−2−2
    水・湿気・結露+2+1+1+1
    塩化物(海水・塩分・凍結防止剤)+2+2
    水素の入り口(酸洗い・電気めっき・溶接・電気防食・水素ガス)+1+3
    濃いアルカリやアンモニア+3
    高温のガス(燃焼ガス・高温の空気)+1+1
    溶けた金属(溶融亜鉛めっき・はんだ・ろう・水銀)+3
    速い流れ・液滴・粒子を含む流れ+1+3
    油・溶剤・洗剤(界面活性剤)+3
    材料
    高強度鋼(焼入れ焼戻しの高強度ボルト・ばねなど)−1+1+1+1+3+1−3−3
    一般の炭素鋼・低合金鋼+1+2+1+1+1−3−3
    オーステナイト系ステンレス鋼−3+2−1−3−3−3
    アルミニウム合金−3+1+1+1+1−1−3−3
    銅合金(黄銅など)−3+2+1−1−3−3
    耐熱合金(Ni基超合金など)−2+3+2−1−3−3
    樹脂(プラスチック)−1−3−3−3−2−3−3+2+3
    ゴム・エラストマー(シール・Oリングなど)−1−2−3−3−3−1−2−3+1−3+3+1
    セラミックス・ガラス−3+3−1−2−1−3−3+1−3−3−3
    壊れるまでの期間
    使い始めてすぐ・製造中・初めての大きな荷重で+2+2−1−2−1+1−2+2−1−3
    数時間〜数か月+1+1+2+1
    数年以上−1+1+2+1+2+1−2+1+2
    組み合わせの点(両方を選んだときに足す)
    塩化物 × オーステナイト系ステンレス鋼+3
    アンモニア・アルカリ × 銅合金(時期割れ)+3
    濃いアルカリ × 炭素鋼(アルカリぜい化)+2
    水素の入り口 × 高強度鋼+3
    くり返しの荷重 × 塩化物+2
    くり返しの荷重 × 水・湿気+1
    速い流れ × 炭素鋼+3
    溶けた金属 × 製造中・使い始め+1
    ゴム・エラストマー × 低温+2
    樹脂 × 油・溶剤・洗剤+2
    樹脂 × 低温+2
    樹脂 × 長い時間をかけた伸び(樹脂は室温でもクリープする)+3

    よくある質問

    破面にビーチマークがあれば、疲労と決めてよいですか?

    有力な手がかりですが、それだけでは決められません。ビーチマークは腐食疲労や熱疲労でも現れ、応力腐食割れは見た目が疲労に似ることがあります。荷重がくり返しだったか、どんな環境だったかと合わせて考え、走査電子顕微鏡でストライエーションを探します。ただし、ストライエーションが見えないからといって疲労でないとは限りません。

    粒界に沿った破面(粒界破面)だけで原因はわかりますか?

    わかりません。粒界破面は、水素ぜい化、応力腐食割れ、液体金属ぜい化、クリープ、焼戻し脆性などで、よく似た見た目になります。材料の強さ、温度、時間、腐食の環境、溶けた金属との接触、製造の履歴(めっき・溶接)を合わせて見分けます。

    起点と最後に割れた部分で、破面の見た目が違うのはなぜですか?

    き裂が生まれて少しずつ進む機構と、最後に残りの断面が一気に割れる機構が違うことが多いからです。例えば、応力腐食割れでできた数mmのき裂が、低温で靭性の低い鋼の中で臨界の大きさに達し、最後は脆性破壊で割れることがあります。最後の破面だけで判断せず、起点を高い倍率で調べます。

    このナビの結果を、事故や不具合の原因として報告に使えますか?

    使えません。このナビは観察の手がかりを整理し、次に何を確かめるかを考えるための学習用の道具です。原因を判断するには、試料を正しく保存し、破面の観察、断面の組織、成分の分析、機械的な試験、応力の解析などを行い、専門家が総合して判断します。

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